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14-44 森の中

 マルカが乗ってるペガサスにロライザも同乗した。


「よろしくね、マルカさん」

「呼び捨てでいいですわ。そちらの方がずっと年上ですし。それより、ちゃんとわたしのこと守ってくださるのでしょうね?」

「ええ。もちろんよ。マルカは敵の攻撃を避けることだけに専念して。危ないってなったら、逃げてもいいわ」

「ええ。本当にまずくなったら逃げますわ。ですがわたしも、一応は戦える身。これでも生ける屍とか歩く樹とかを相手にしてきましたわ」

「そう。それは頼もしいわね」


 マルカの腰の剣を見ながら、ロライザは微かな笑みを見せていた。本気で頼るかは別として、最低限自分の身は守れるとは判断したのだろうな。



 ユーリとフラウも狼化。ユーリの上にはフィアナが乗る。フラウには俺とルファだ。残りは徒歩で移動する。


「フラウさん、この重さで走れますか?」


 魔法石の詰まった袋をフラウの胴にくくりつけながら、ルファが尋ねた。フラウの体はふたり乗りで、ルファが乗ってももうひとり分の重量は運べるはず。

 商人手伝いってこともあって、重いものを運ぶ機会はこれまでもあったのだろう。今回は事情が特殊すぎるけど、やることは変わらない。フラウはゆっくりと頷いていた。


「魔力を消費し尽くした石から捨てていきます。もったいないですけど、それでフラウさんは身軽になっていきますから」

「そうだな。お願いする。……ふたりのことは、俺が全力で守るから」

「ええ。しっかり守ってくださいね……わたし達も頑張ります。リゼさんのために」


 それから、ペガサスに乗ったロライザとマルカが近付いてきた。


「ねえ。さっきの続き。このペンダント貸してあげる」

「あくまで貸すだけですわ。本来の所有者は国で、シュリーさんが無理して持ってきたものなのですから」


 無理をすれば国宝レベルの物でも持ち出せるってのもすごいけど。

 ロライザが手渡したのは、紐と魔法石で構成されたペンダント。紐は人間サイズの長さだから、俺にはちょっと長いか。紐だから体にくくりつけるのは難しくない。

 魔法石は光り輝いているけど、意匠はそこまで凝ったものではない。言われなければ、このシンプルなペンダントが重要な物とは思えない。

 古いものってのは、大体そうなのかもしれないけどな。


 さっきの話の続きってことは、これがアーゼスの遺品のひとつ。使い魔の精神を実体化させるためのもの。


「このペンダントをリゼにかけるの。それで、主人から使い魔に魔力を送れる。……正式な使い魔としての繋がりを構成するのは、戦いながらでは面倒でしょう? だからとりあえずこれを使って」


 なるほど。リゼと合流できたとして、そのままじゃ魔力を貰えないもんな。普通の魔法使いなら俺に魔力を送れるけど、リゼはそうはいかない。

 正式な契約を結ぶ暇もないらしいし。


 だからこの魔法道具の出番か。精神の実体化なんて付与効果もあるらしいけど、どっちかといえば俺への魔力供給がメインか。

 もちろん、実体化の方も興味はある。俺だけじゃなくてロライザやマルカもらしい。


「アーゼス様の作った物だから、効果は間違いないわ。必要だと思ったら使いなさい。元の姿を思い浮かべるだけでいいわ」

「この手の宝が実際に使われる例などほとんどありませんわ。歴史的にも貴重な出来事なので、後で詳細を教えてくださいな」

「お、おう……」


 戦いの支援とかじゃなくて、本当に純粋な興味なんだな。いいんだけど。


 これで準備は整った。全員揃って、周囲の警戒をしながら森を進んでいく。


「ミーナ、森の中は見えるか?」

「ええ。ちょっと待ってて」


 なんとなく、全体の指揮はカイがとることになってる。いつものことだから誰も気にしない。

 ミーナが探査魔法担当になるのも、いつの間にか決まってることだ。これも誰も疑問を挟まなかった。


「ええっと。ドラゴンは見えないわ。隠されてるのだと思う。オークが数体いて、そこにリハルトさん達が向かってる」


 そのオークは罠って話だな。誘い込まれた冒険者を、隠れていたオークが一斉に襲いかかるというもの。

 リハルト達が簡単にやられるとも思えない。というか、元々撤退前提の進軍だし。それが罠だと把握してる可能性すらある。


「とはいえ、簡単にやられてしまうのも悪いか。リハルトさん達を追って、それとなく助けてやるのも手かな。他にどこに行くべきかの方針もないし」


 カイの言うとおり。敵は森の中で探査魔法から身を隠していて、どう進めばいいかわかったものじゃない。

 オークぐらいしか目印がないなら、それを目標に行くのも手だ。


 そのはずなんだけど。


「あのね。目標ならあるというか……リゼを見つけた」

「え?」


 遠慮がちに言ったミーナに、俺達全員の目が向いた。

 いやいや。敵が隠れてるなら、リゼも隠すはずなんだけど。


「リゼの様子は?」

「倒れてる。周りに生き物はあまり見られない。小さいネズミとかウサギはいるかな」

「倒れてるって、気を失ってるとか?」

「ううん。これは寝てるわね。すやすや気持ち良さそうに。いい顔してる」

「…………」


 あいつは。敵地の真ん中だぞ。なんで寝られるんだ。催眠魔法の効果なんてとっくに切れてるだろうに。

 ああ。なにかやったんだな。敵が困る何かを。その結果がこれか。

 お前はそういう奴だ。そういうのを期待してたんだ。


「とにかく、リゼが無事なのはわかった。助けにいくぞ。ミーナ、リハルトさんの様子は?」

「もう少しでオークのいる場所につく」

「よし、時々そっちに気を配ってくれ。俺達は全員でリゼの方へ行く。マルカさんとロライザさんは飛行をはじめてください。それから、森の中を目につく限り爆破してください」

「え、いいの? そんなことして、森がめちゃくちゃに。それに敵に見つかるんじゃ」

「敵には遅かれ早かれ見つかります。向こうも探査魔法を使うので。リハルトさんがオークと接触する前に先手を打ちたい。それから……」


 どっちかといえば、ロライザは森を破壊する行為の方が気になってるらしい。

 だけどカイは気にしてない。というか、楽しくて仕方がないって表情を見せた。


「めちゃくちゃにしてください。どうせ敵の拠点です。二度と使えないぐらいに破壊しましょう」


 誰が作って長い時間隠し、維持してきたもの。それを台無しにする行為。

 そうだな。その手の嫌がらせって、最高に楽しいよな。

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