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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第12章 未熟者と半魚人

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12-42 急速旋回

 敵が猛スピードで突進している以上、水面は激しく波立っている。だからこっちからも視認しやすい。


「見えました。普通に射殺していいんですよね?」


 いつの間にか、ユーリに乗ったフィアナがこっちに来ていた。既に矢の用意はしているようだ。


「当てられるか?」

「もう少し近付いてくれば」


 この前は慣れない曲射なんかやって、ずいぶん敵を討つのに手間取ってしまった。フィアナの感覚ではそうらしい。

 ひとりで曲射して当てられるんだから、俺達素人からすればとんでもなくすごいって思うんだけどな。この天才は違うらしい。


 前回は数体倒した所で、サハギンは水中に潜って矢を防いでしまった。敵がそんな戦法を取るのは仕方ないとして、こっちも対抗するべきとフィアナは思っているらしい。

 つまり、隠れる間もなくことごとくを殺す。


 ユーリの背中でじっと狙いをつけながら十分にひきつけ、そして放った。

 その一本の矢はサハギンの脳天にまっすぐ刺さり、サハギンは力なくイルカから転落した。

 そしてそれで終わらなかった。フィアナはすかさず二本目、三本目の矢をつがえて放つ。最初に射た矢の結果すら見ず、まさに矢継ぎ早に射るのだった。


 自分の射た矢が当たるのは当然。そんな自負が見えてくるやりかた。そして一瞬のうちに何本も放たれた矢によって、サハギン十匹のうち六匹が討ち取られていた。

 その段になってようやく、サハギンを乗せたイルカは水中に潜っていく。その方が進行速度が遅くなるが、背に腹は変えられないということか。


「これ以上早く射るのは、もう少し鍛錬が必要ですね」

「いや、十分だろ…………」


 既に人の域を超えてる気がする。しかしこの天才は不満そうだった。


 それはそうと、接近してくるサハギンだ。サハギンの体はイルカにとって、水中においては水の抵抗を受けやすい形をしている。

 だから突撃の勢いは削がれる。このまま突っ込んでくるのかどうかはわからないけど。


「けど、そのつもりらしいな。予想だけどしばらくしたらまた水面に出て、こっちにぶつかってくる。」


 まるで弾丸だな。その結果自分達も死ぬ可能性については考えてないらしい。

 乗り手が死んでも、それを乗せていたイルカが生き残ったというのも三頭ほどいた。それも足並みを揃えつつ、一緒に突撃をかけている。

 敵が出てきたらすかさず討ち取れるよう、フィアナはまた弓を構えた。


「コータ、どうする? 爆発魔法使って一気に倒す?」

「いや、それをすれば船の速度が落ちる。それは避けたい」

「でも、またさっきみたいに潜って下から攻撃してくるかも」

「そうだな……」


 敵の攻撃がない間に探査魔法を発動。敵は海中に潜りながらも、比較的浅い位置を維持しつつなおも接近中。

 もう少ししたら深く潜行するのか、それともそのまま正面衝突するつもりかは、いまいち判断がつかない。


 しかしいずれにせよ、わざわざ衝突を受ける危険を冒すのはちょっと嫌だな。正面衝突だけなら魔法障壁でなんとか受けきれそうだったけど、水中からとなればそうもいかない。


 よし、回避するか。


「ミーナ、衝突する直前になったら教えてくれ。ナタリア、シャーダの力を借りたい」


 魔法が使えるふたりに声をかける。それぞれ、俺の提案に驚いた様子を見せながらも頷いた。


「やる事は簡単だ。適切な瞬間に風魔法を使う。今船尾でやってるように、船の上で風を吹かせれば逆側に船は進む」


 だから船の側面に向かって風魔法を使えば、急旋回が可能だ。メインは俺の全力の風魔法だけど、同じ魔法を使える者は多いほうがいい。


「シャーダ、風魔法は使えるな? 合図があれば全力でぶっ放せばいい」


 サメの使い魔がしっかり頷くのを見て、俺達は船の右舷に移動する。

 それから、近くにいた兵士に船尾の方へ伝言を伝えておいた。こんな理由で船が急旋回するけれど、問題はないから進路の修正はしないように、と。


 探査魔法では、サハギンを乗せたイルカは水面ギリギリを潜行していた。一方騎手を失ったイルカは深くに潜り、下から船を突き上げるつもりらしい。


 なかなかの連携だけど、こっちも負けるわけにはいかないからな。探査魔法を解除して、風魔法の準備にはいって。


「今!」

「風よ吹け!」


 ミーナの鋭い声と共に、俺は詠唱。次の瞬間突風が海に向かって吹き荒れ、船は横方向の推進力を得て曲がる。

 直後に、水面からサハギンが顔を出して、船の真横を素通りしていく。潜航していたイルカもまた、水面から勢いよく顔を出した。

 もうちょっと勢いよくいけば、きれいなイルカジャンプが見れたのかな。


「フィアナ!」

「わかってます」


 なんとも冷徹な声と共に、顔を出したイルカを次々に射る少女。俺も風の刃によって、目につく敵を切断していった。


 激突する勢いで迫ってきたイルカやそれを乗せたサハギンは、もちろん急に止まることもUターンすることもできない。俺達の目の前を通り過ぎていった。

 つまりは討ち漏らしだけど、一体か二体だ。後続の船に対応は任せよう。


「ミーナ、泳いでこっちに来てるサハギンは?」

「まだこっちに来るまで、もう少しかかりそう」

「そうか。……敵の船は?」

「かなり追いつけている」


 まだ目視はできない距離だけど。俺も探査魔法で確認してみた。なるほど、確かにかなり近い。


 この距離なら、もしかすると。


「爆破できるかな……」

「この前のクラーケンにやったみたいに?」

「そうだ」


 爆発魔法は離れた場所も爆発させられる。とはいえ視認できる距離しか無理だ。

 この視認できるというのは、探査魔法で見られる場所も含む。

 もちろん探査魔法をしながら爆発魔法は唱えられないから、素早い切り替えによって不正確な狙いで爆発させるしかない。

 あと、さすがに俺の探査範囲の端を爆発させるほどの距離は対応できない。そうでなくても、距離があれば狙いはずれるのに。


 けど、敵の巨大な船は的としては狙いやすい部類だ。先日のクラーケンほど猛スピードで動くわけじゃないし、大きさも今回の方がずっと上。

 大きさゆえに一撃で致命的な損傷を与えることは難しいかもしれない。距離もあるから、当たらないかもしれない。けど何発も撃てば、相手の航行速度を徐々に落とすことはできるはず。

 もちろん敵の魔法使いも同じことをやってくるかもしれない。うまくいくかどうかの差はお互いの魔法の差によるだろう。


 よし、やってみるか。

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