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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第12章 未熟者と半魚人

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12-34 魔力の付与

 えっと。つまりどういうことだ?

 俺達はロライザ、あるいはケイラニアという魔女から、アーゼスが残したインクを探してくれと言われた。オロゾが持ってるはずだと。

 そのオロゾは、インクを道具屋に売ったという。なるほど道具屋か。つまりここか。


 で、今回の俺達の最大の目的であるインクを、彼はあっさり渡してきた。


「儂の依頼は、ナタリアの力になり救う事。ここまで協力してくれて今更途中で投げ出す御仁ではないと、儂は知っていますぞ。なので報酬を先に渡しますぞ」

「あ、ありがとうございます……」


 そういう事ならまあいいか。リゼもおずおずと瓶を受け取る。

 けど、それはこの店を訪れた主目的とは違っていて。


「魔法石を埋め込んだナイフがあるなら、当然同じ機能の剣もあるというわけですぞ」

「あるんですか。いえ、あってもいいとは思いますけど」

「魔法使いの中には時々、武器に魔法を付与させて戦う者もいるそうですぞ。体力に自信のある魔法使いにしかできない芸当ですが」

「疲れちゃうもんね。それに魔法を詠唱しながら武器を振り回すから、器用じゃないとできない。お姉ちゃんはナイフでやってたけど」


 補足説明のように言ったミーナの言葉には、姉に対する憧れのような感情が混ざっていた。


 とにかく、俺達やナタリアが必要としている物は見つかった。

 店に置かれてある、柄の部分に魔法石が埋め込まれた剣だ。ナタリアが現在訓練に使っている剣と比べて、そうサイズも変わらない。


「使い魔が住み着いている魔法石を移すこと自体は、そう難しくはないですぞ。…………インクや剣を持ち出したのは、儂の方から大将に説明しておきますぞ」


 そういえば他人の店から勝手に商品持ち出してるんだよな。閉店してるとはいえ。

 大将とオロゾは顔なじみで付き合いも長そうだから、別にいいのかもしれないけど。




 とにかく、これでなんとなく方針は固まった。早速ナタリアの所へ戻って経緯の説明。

 シャーダの力を最大限に使える戦法だと説明したら、ナタリアもあっさり了承してくれた。よし。じゃあ次は、その戦法に向けての訓練だな。


「わたしも一緒にやる」


 と、ミーナがそんな提案をした。姉の得意としていたやり方を思い出して刺激を受けたのかもしれない。特に断る理由もないし、いいけど。


「ミーナ。それは、僕が雷魔法を武器に付与させるということかい?」

「雷じゃなくてもいいけど。炎とか。水魔法……は難しいかな?」

「なるほど。まあミーナの頼みだ。やってみよう」


 ミーナの頭に乗っているトカゲの使い魔も、なんかやる気みたいだ。



 カイに尋ねたところ、ナタリアは以前より熱心に剣術の指導を受けているそうだ。

 決して、前はサボっていたというわけではない。けど、より確実にサハギンを倒したいという気持ちから、理性的に学ぶという姿勢が見られるらしい。


 この分ならいの場に出しても大丈夫そう。何かあったとしても、なんとか守れそう。カイがそう言ってくれるのは嬉しいな。

 カイにとって魔法を付与させた剣での戦いは専門外だけど、普通の剣の戦いの応用でなんとか指導はできるらしい。

 こいつ、割とすごい奴だよな。



「雷よ起これ…………。むう。威力が弱い」

「そうは見えないけど」

「もっと強烈なのが欲しいの。お姉ちゃんはそうしてた」


 一方のミーナは、なかなか苦戦してる様子を見せた。

 いや、今のミーナの実力は十分なんだろうけど。ナタリアよりもずっと役に立つはずなのは間違いない。

 実際、どこかから買ってきたと思しき短剣に纏ったスパークは、十分な威力があるように見える。実戦で使えるもののはず。


 けどこいつには、目標とすべき優秀な姉がいるわけで。それに届かないならまだ未熟ってわけか。


「ターナさんは確かにすごいよねー。でもさミーナちゃん。ミーナちゃんには、ミーナちゃんなりのやり方があると思うんだよね」


 ナタリアと一緒に走り回る役を解かれたリゼが、途端に生き生きとしながらアドバイスをしている。まったく。あまりうるさくしてると、また走らせるぞ。


「わたしなりのやり方…………」

「ミーナ。僕らと旅をしてきた中で、なんとなくミーナのやりやすい方法というのは、何度か気付けてきたはずだ。あとはそれの応用だよ」

「そっか。ありがとう、トニ!」

「どういたしまして」

「ねえミーナちゃん。わたしは? わたしにはお礼は?」

「え? うん。リゼも偉い偉い」

「なんか実感がこもってない…………」


 まあ、アドバイスとしては月並みだもんな。リゼへの態度としてはこれで十分だ。




「そうなんですね。皆さん頑張ってるんですね」

「そうなんだよー。わたしも毎日大変なんだよー」

「聞く限り、リゼさんはそこまで大変でもなさそうですけど」

「うぐっ」


 その日の夜、リゼは大将の店で食事中にフィアナとそんなおしゃべりをしていた。

 今回のリゼはナタリアへの指導役で、まあそれはそれで苦労はあるんだろうけど、ランニングしてる時より楽なのは確かだ。

 人に教えるのが下手なフィアナが言えることでもない気がするけど、でも事実は事実だ。


 そして頑張っているナタリアは、ここに帰って軽めの食事を取るとすぐに部屋に行って寝てしまった。相当運動して疲れたのだろう。

 当然、店の手伝いなんてできないから。


「フィアナちゃーん。こっちにエール人数分頼むー!」

「あ、はいただいまー!」

「ねー。ユーリくん。おねーさんと一緒に飲まない?」

「忙しいから、だめ」


 とまあ、ちびっ子ふたりが代わりに頑張ってる。たしか、店の準備の手伝いだけって話じゃなかったっけ? なんで店に立ってるんだ?

 なんか上手くこなせてるみたいだから、いいんだけど。というか、ふたりともかわいい部類の容姿を持っているからか、既に客の支持を集めている様子だ。


 特にユーリは街のお姉様がたという、新たな客層を開拓してしまったらしい。

 ああ。小さな少年を誘う大人のお姉さんに、フィアナがあからさまに警戒の目を向けてるぞ。一歩間違えたら、あの女性は帰宅途中に屋根から矢で狙撃されかねない。


「フィアナちゃん。わたしもお酒飲みたい! 持ってきて!」

「忙しいから、リゼさんは自分で取ってきてください。カウンターはあっちです」

「ひどい…………」


 うん。これは完全なやつあたりだな。


 そんな感じで夜を過ごし、翌日はまたナタリアの訓練をする。そんな日々が少しの間続いた。



 そして、あっという間に討伐作戦の決行日が来た。

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