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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第11章 人助けの呪縛

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11-40 イカの突進

 前回の討伐作戦を失敗に追い込んだというイカの怪物は、不気味なほど静かに海中を漂っていた。


 たしか前回は、未熟な魔法使いの探査魔法の範囲外から一気に迫って、船団の真ん中で大暴れしたんだっけ。

 そんな俊敏な動きを見せる気配はなく、ただこっちを見ているだけ。味方であるはずのタコが攻撃を受けているにも関わらず、静観を続けていた。


「ねえコータ。このまま一斉攻撃すれば、意外と楽に倒せたり……しないかな?」

「どうだろう。そんなに簡単にいくかな……」


 さすがに攻撃すれば、反撃があると思う。とはいえ、このまま何もしないわけにはいかない。


「リゼー! とりあえず爆発魔法かけてみよっかー! わたしはイカの左側を狙うから、リゼは右側お願いー!」

「はーい! 任せてお姉ちゃん!」


 実際に任されるのは俺なんだけど。まあいつもの事だしいいか。


 敵は海の中であり、普通の武器では攻撃が届かない。爆発魔法を使うしか無いわけで、とりあえずやってみる価値はあった。


 探査魔法で狙いをつけて、一瞬で解除して詠唱の後爆発。距離もあるわけで、やはり直撃させるのは難しい。

 それでも両側面からの爆発は間違いなく威力があるはず。我ながら強力な爆発により、海面が荒れた。


「コータ、どう? イカは倒せた?」

「ちょっと待ってろ……」


 再び探査魔法。忙しいな。

 イカは確かに傷を追っているように見えた。腹部の右側にかすかな抉れが見て取れる。

 そしてようやく、イカも動く気になったらしい。ただし、妙にゆっくりだ。攻撃してきたこちら側に向かって、漂うような速さで接近。


「リゼ! もう一回!」

「うん! エクスプロージョン!」


 リゼの詠唱に合わせて爆発魔法を発動。さっきと同じく海面の揺れから、確かに爆発は起こったとわかる。

 そして探査魔法でみる。さっきまでいた場所に、イカはいなかった。


「っ! フライナさん避けて!」


 リナーシャの悲鳴に似た叫びに、俺達の船の操舵手は咄嗟に船を動かす。探査魔法で自分の近くをみれば、イカが猛然とこっちに接近しているのが見えた。


「捕まれ! 一発でかいの当てるから!」


 イカがまっすぐこちらに来るなら、進路予想はそれなりにできる。その進路を塞ぐように爆発を起こした。

 出鼻をくじくとか、そんなつもりだけど、当然ながら爆発位置は海面の、しかも俺達の船の近く。


 水柱が上がった。波を大きくかぶりながら、船が大きく揺れる。事前に警告したから、みんな船の縁に掴まって落ちるということはなさそうだ。


「にぎゃー!? コータ! にゃんでこんな事するのかな!?」

「あの巨体が船に直撃するよりマシかなって! 正直俺もちょっと後悔してるけど!」


 でも、それでもマシはマシだった。イカがこの船に当たれば、こんな木造船は一瞬で粉々だ。俺達全員が溺れるか、イカに捕まって沈むかのどちらか。

 そして、そんな最悪の事態はなんとか回避された。イカの突進の進路は逸れて、俺達の船から少し離れた箇所に勢いよく浮上。再び波に煽れて船が揺れる。これは船酔いやばそうだな。


 俺達の船は無事だったが、別の船が直撃とは言わないでも被害を受けた。浮上位置に一番近くにいた船が転覆。乗組員は海に投げ出された。

 漁師は泳げるとして、街の兵士はそうはいかない。必死にもがきながら、なんとか近くの船までたどり着こうとしていた。

 そこにイカが触手を伸ばす。


「各船は散開してください! 一隻だけ、海に落ちた人の救助を! リゼは引き続きイカへの攻撃をして!」

「わ、わかった!」


 海上に出てくれた方が、波が立たないから爆発魔法は使いやすい。味方が大勢いる中で爆風が吹き荒れる事になるけど、それくらいは我慢してほしい。

 リナーシャの指示に従い、俺はイカの頭部に何発もの爆発魔法を叩きつける。敵もそれが脅威だと認識したのか、即座に海に戻っていった。

 イカのくせに頭がいい。よほど、生物商人とやらの調教なり調整がうまかったのか。


 イカはついで、海中から獲物に触手を伸ばして捕らえる作戦に出たようだ。それぞれの船の乗組員が海中に目を凝らし、なんとかそれを回避し続ける。

 いまのところ、誰も捕まることなく立ち回れている。先程転覆した船の乗組員も、全員が救出されたようだ。

 そして俺とリナーシャで、イカの体に爆発を当て続ける。水中にいる間は当てにくいし時間がかかる。でも仕方ない。


「ねえコータ。このまま続ければ勝てるんじゃないかな!?」

「どうかな。そう願いたい物だけどな!」

「リゼさん。そういう事言うと、大抵良くない事が起こるんですよ。お尻叩きますよ」

「やめてっ!?」


 海中に弓を向けて狙い続けてるフィアナが、わざわざそんな事するとは思わないけど、リゼは本気で怖がったようだ。


 フィアナは、イカの体が海面近くに来ればすかさず矢を射ていた。そして確実に当てていた。

 この天才少女は驚くべき事に、空気中から水中の的を射る為に必要な、多少の狙いの変更を完璧にこなしていた。

 もちろん光の屈折率の違いなんて知識すらないはずだけど、直感で補正をしているようだ。

 ああ。今更驚かないぞ。


「ベル。大丈夫か?」

「は、はい。大丈夫です。大丈夫…………」


 片手で船の縁に掴まりつつ、片手で剣を持っているベルの表情は硬い。

 恐怖を感じているのか、それとも全身ずぶ濡れで寒いだけか、微かに震えていた。


 すでに戦闘の真っ最中だ。水しぶきが飛び、船は揺れ、敵の巨体が見え隠れする。完全にその姿を現さないのも、ベルにとっては恐怖なのだろう。


 それでもベルは、今のところは恐怖に呑まれたりはしていない。

 震えながらも剣をしっかり握り、周囲に目を配り続けている。もし敵の触手が姿を現せば、そして自分の近くに来れば。付け焼き刃なりの剣術で一撃を与えようという気概はあるらしい。

 実際に役に立つかは別として、頼れることだ。


 そして、その相手であるイカは…………。


「何をする気だ……?」

「どうしたの、コータ?」

「あのイカ、かなり深く潜り始めた」


 探査魔法なら海底までも見渡すことが可能。イカが下方向に潜っていこうと、見失うことはない。

 とはいえ、意図がわからない。逃げるというのはありえない気がする。では、考えられる次の展開は。


 俺が思った通り、イカは十分な助走をつけながら、一気に海上方向へと反転して再度迫ってきた。

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