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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第11章 人助けの呪縛

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11-39 三度目の討伐作戦

 もちろん討伐隊にはベルも参加している。昨日買ってきた真新しい剣を手に、緊張した面持ちだ。


 冒険者登録はまだしていない。だから立場としては、市民の有志とか義勇軍とかそういう感じかな。

 他にベルみたいな、漁師以外の市民からの参加者はいないけど。


「大丈夫だ、ベル。落ち着いて。みんな戦いのプロだ。きっとうまく行く」

「そ、そうですね! わたくしも頑張ります!」


 緊張するのは仕方ない。あとは、なんとか戦いがうまく行く事を願おう。


 というわけで、俺達は船に乗り込み海へ。探査魔法で見るに、相変わらずイカとタコは悠々と泳いでいた。


 二回の討伐作戦を乗り切ったタコは、あちこちに傷を作っているだろうし足の欠損も目立つ。対してイカはほぼ無傷。

 そして両方とも、未だに生き続けて海を荒らし続けていた。


「方針はこれまでと同じです! 魔法使い達が爆発魔法で海中の敵を叩き続けること! 他の皆さんはそれの援護です!」


 俺達とは別の船に乗っているリナーシャが、すべての船に聞こえるよう指示を出す。一応、今回の作戦の指揮官という扱いだ。

 フライナも乗船してる、というか俺達の船の操舵手なわけだけど、戦いに関しては素人。だからリナーシャに手柄を譲ることに。


 まあ、リナーシャだって戦いの素人なんだけどな。それでもこれまでの討伐作戦に参加してきて、周りからの信頼も厚い。肩書もある。街の人間ではないとはいえ、指揮を任せるには十分だと思う。

 街のギルドマスターも、城の偉い騎士や将軍職みたいな人も参加してるけれど、それぞれ冒険者や兵士の指揮を取るのが仕事みたいだ。それらを包括する総司令が、リゼの姉ってのもすごい話だけど。


 俺の船に乗っているのは、いつものパーティーメンバーとベルとフライナ。以上。まあ船の大きさ的にこれが定員ってことかな。他の船に混ざりながら、どんどん沖合に漕ぎ出ていく。

 船団全体から見た位置としては、右翼側って言うべきなのかな。中央にリナーシャが乗る船。左翼にサキナの船。魔法使いは分散させようという方針だ。そして魔法使いの船を、他の船が囲んで守るという構図。


「みなさん、よろしくおねがいします。操舵は実はそこまで得意ではないのですが、がんばります」

「不安になること言わないでください……」

「すいません。なにぶん、若い頃は勉強ばかりしていたので……一通り技術は父から学んだのですが、その父も早くに亡くなって……もっといろんなことを学びたかった」

「…………」


 この人はこの人で、いろいろ苦労してきたのかも。だから若くして当主か。カイと父親の関係性についていろいろ考えていたのも、そういう理由があったのかもな。

 その手の苦労話に若干の興味は惹かれつつも、今はそれどころではない。経験は浅いながらも確かな操舵技術で、俺達は確実にタコやイカの方に近づいてきている。


 船の進行方向に対して、前衛にタコで少し後ろにイカという形で、奴らは海中に浮遊している。探査魔法で見るだけだけど、こっちを向いているように見える。待ち構えているわけか。

 傷が多く比較的弱っているタコが前衛なのは、死ぬ前にできるだけこっちの戦力を落としたいという意味かな。捨て身の作戦とか。

 あるいは、タコが前衛で食い止めている隙に、イカが猛スピードで急襲してくるとか。そこまで考えてるとすれば怖い。イカの思考能力超えてる。


 探査魔法でできるだけ遠くを見ても、他の怪物は見当たらない。よし、早めに倒して戻るか。


 前衛のタコが接近するにつれ、リナーシャの船は船団の前の方へと出るようになった。爆発魔法を使うにしても、できるだけ近付いた方が威力は上がる。

 両翼の俺達の船も、徐々にタコの方へと近付いていく。


「エクスプロージョン!」


 最初に仕掛けたのはリナーシャ。タコの頭部に向けて爆発魔法を炸裂させる。海中の比較的深い場所での爆発だから、それによる海面の揺れは限定的。


 タコはまだ海中に潜っていて、視認するのも難しい。直前まで探査魔法で位置を見つつ、見当をつけての攻撃だった。


 そんなやり方だから、直撃とはいかなかった。

 とはいえそれなりのダメージは与えられたし、タコもまた戦闘の始まりを察して浮上し始めた。

 探査魔法で見ていた俺がその事を伝えると、すべての船が一斉に臨戦態勢に入った。


 タコはと言えば、船団の中央付近を目指して浮上を目指しているように見える。

 その地点に船がいれば危険だから、浮上予測地点から船が一斉に離れていきスペースを開けていく。


「きたぞ! やれ! 攻撃だ!」


 兵士の誰かが叫んだ。海面から、赤黒くてぬめりを帯びた質感の触手が二本、飛び出してくる。


 兵士達は一斉に攻撃を仕掛けた。

 船が触手を囲んでいる形だから、下手に矢を射れば触手を飛び越え味方にあたってしまう可能性もある。的自体が細長く、しかも動きも激しいし。


 だから弓兵は斉射をするでもなく、各々が海面近くの根本に狙いをつけて弓を射る。

 これなら外れても矢は海にいくだけ。さすがに本体に当たることまでは期待できないけど、傷つけることはできるはず。


 触手が船の方に迫れば、槍を装備した兵士が攻撃して防ぐ事になっている。けど、タコの触手の方が圧倒的にパワーがあるし、役に立つかは微妙な所だ。それよりも。


「エクスプロージョン!」


 海面から出た触手の先端を、爆発魔法がふっとばした。サキナの魔法だ。

 敵が海面近くまで浮上している以上、海中での爆発攻撃は少し危険だ。

 海面が波打ち、船が転覆する恐れがあるから。もちろん、タコが本気で攻撃を仕掛けてくれば、そんな事言ってる場合じゃないだろうけど。


 触手を一本ずつ破壊していけば、いずれ本体が浮上してくると思われる。そうでなくても、一部の兵士達は銛や槍を水中に投げて本体を攻撃し始めていた。

 水中の敵だから威力が減衰して、どれだけの傷を負わせられるかはわからない。でも、効果はわずかながらでもあるはず。


 戦いにくい相手なのは変わらない。けど、わかってたことだし、今のところなんとかやれている。

 膠着状態で細かな傷をつけ続けていけば、いつかはタコも力尽きるはず。


 サキナと兵士達にタコの相手は任せて、俺達の船はさらに向こう側のイカの方へと進んでいった。リナーシャもそちらへ向かい、より強い敵との決着をつけようとしていた。

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