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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第10章 盗賊騒ぎと伝説の魔女
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10-29 城壁崩し再び

 捕まってた人達に、しっかりと扉に鍵をかけて静かにするようにと言っておき、サキナと共に城門へと走る。

 盗賊達は現状、人質に構ってる暇はなさそうだった。兵士との戦いに忙しいらしい様子。フィアナもしっかり戦ってくれてるようだし。


 物陰に隠れて城門の方を見る。馬車がそこを通過したところだった。城門に立つ盗賊はなんら略奪行為をすることなく、大きな馬車を招き入れていた。そして荷台には大量の人間。


 馬車が完全に城門を超えたところで、サキナは爆発魔法を詠唱。俺もそれに合わせて発動した。

 同時に炸裂。爆音がひとつと、爆発が至近距離でふたつ。大きな荷台を完全に吹き飛ばした。中にいる五十人ほどの人間も無事では済むまい。


 生きているのか死んでいるのかわからない人の体が宙を舞い、石畳の地面に叩きつけられている。今ので確実に死んだな。

 五体満足のまま死ねたのはまだ幸せな方で、血だらけの手足があちこちに散らばった。かろうじて生きている人間のうめき声なんかも聞こえる。門の周りは血の海となり、脳や臓物の破片がそこに浮かんでいる。城壁にも赤い模様が描かれた。

 爆発音に驚いた馬が大きく嘶き、手綱を引いていた御者を席から転がり落とした。落ち方が悪かったのか、彼も頭から地面に叩きつけられ、首のが折れたらしい。血溜まりをバシャバシャ言わせながら、ビクビクと体を痙攣させていた。



 ああ。グロい。こういう事、本当はあんまりしたくないんだ。でもやらないと別の誰かが死ぬんだよな。それは嫌だ。だから容赦なく死んでもらうしかない。


 驚くべきことに、まだ戦える状態の人間が複数人いた。その中には獣人も含まれている。そういえば、転がっている死体にも毛深いものが多い。血まみれだからわかりにくいけど、盗賊がしているよりも整った武装をした者が多いように思える。


 獣人か。やはり、不穏分子である獣人解放同盟も絡んでるんだろうな。不穏分子達があちこちから盗賊をかき集めてこんな事を起こさせる。で、援軍として正規の不穏分子の人員がやってきたということだろう。


 奴らはどこから攻撃されたのか、周囲を注意深く見回していた。物陰に隠れている俺達の姿は見えてないだろうけど、探されるとさすがに見つかる。


「どうやら、グズグズしてる暇はないみたいね。次の馬車が来る」

「マジかよ…………」


 探査魔法を使う。たしかに城壁前の道を、同じように人を大勢載せた馬車が進んでいた。生き残りの敵がさっきの爆発を警戒してこれを止めようと、駆け寄っているのが見える。とはいえ放っておけば、やはり大量の敵が城壁内に侵入するのは確実。

 さらに後方を見れば、もう二台ほど同じような馬車が来てるし。敵はどれだけいるんだろうな、まったく。


「城門が壊れて、敵は入り放題。それを止められるのは魔法使いがふたりだけ。あとはかわいい使い魔ちゃんもだけど。どうすればいいかしら。早くしないとあの馬車が来ちゃうし、屋敷に残してきた人達も放っておけない」

「よし、とりあえず城壁を塞ぎましょう。前にもやったことがあります。城壁の、開口部の上の方を爆破して瓦礫を降らせ、それで穴を塞ぎます」

「ねえコータ! そんなことしたら、また怒られるよ!」

「かもな。でも、盗賊がなんか下手やって崩れたってことにすればいい。戦闘中に起こったことだ。本当のことを城の人間に知られなきゃそれでいい」

「いい考えね。じゃあそれでいきましょうか」

「うう…………エクスプロージョン……」


 再び、ふたり合わせての爆発魔法。鉄の扉で覆われていた開口部の上部を狙った。

 この前やった時は離れた場所からじゃなくて、あの開口部をくぐり抜けながら真下でやったんだっけ。今回の横からの爆破とどっちが、城壁の崩落の効率がいいかは知らない。城壁崩しなんて人生で何度も経験したいことじゃないし。

 どちらにしても、俺達の目の前で城壁は崩落していった。煉瓦が街の外方向に飛び散りつつ、穴を塞いでいく。そういえば、建物って縦からの力より横からの力の方に弱いんだっけ。


「ねえコータ、あの瓦礫を登って盗賊が来ることってあると思う!?」

「あるだろうな…………あいつらも、瓦礫の撤去ぐらいはするだろうし」

「馬車が簡単に通れなくなった事だけでも成果よ。敵の進行は遅くなる」

「けど敵も、俺達をさがして排除するのに躍起になるだろうな」

「うー。こっち来てるよ」

「一旦引きましょう」


 さっきの爆発で生き残った者が、散開して攻撃者を探している。そのうちのひとりが、俺達が隠れてる建物の陰に近付いていた。殺すのは簡単だけど、それをしたら俺達の存在に気付かれる。その結果起こるのは、大量の敵に一斉に襲いかかられる未来だろう。

 さすがに城壁の内側の残存兵力程度なら俺達でも勝てるだろうけど、遠からず馬車に乗ってた敵もそこに加わるわけで。そうなれば勝てるかは怪しい。

 それに懸念事項はもうひとつ。


「屋敷の方に人が」

「屋敷って……ああ、さっきの人たちがいた。ううっ。忙しい」

「仕方ないよコータ、戻ろう」


 あの人達を助けるのが優先事項だ。城門を死守したい気持ちを振り払いながら、屋敷の方へと戻る。たしかに、山賊の格好をした男が屋敷の方へ駆けている。手には片手サイズの斧を持っていた。

 俺達がその前に立ちふさがると、彼はぎょっとした様子で立ち止まる。


「盗賊覚悟しなさい! 捕まった人達になにかしようとしたら、わたしが許さないからね!」

「ま、待ってくれ! 俺は盗賊じゃない! この街の人間だ! 俺も捕まってこんな格好をさせられてるだけだ!」

「嘘よ。この人、油断させるために言ってるだけ」

「ファイヤーアロー」


 探査魔法で目の前の男悪意を見抜いたサキナの言葉に従って、俺は一本だけ炎の矢を放つ。斧で襲いかかろうとしてきた盗賊は、一瞬で絶命した。


「コータ。眠らせた方が良かったんじゃないかな? 敵だけど、なんかあんまりいい気分じゃないね」

「お前、あんなに勇ましいこと言いながら立ち塞がっておいて…………まあ気持ちはわかるけど」


 咄嗟のことで、俺も眠らせるよりも殺すって選択をしてしまったけど。でも盗賊の演技は一瞬であっても信じかけてしまうような物だったしな。


「とにかく次にやる事をしましょう。屋敷の中の人達を、この場所から外に出さないと。放っておくとまた盗賊が来るわ」

「となると、俺達もその対処をしないといけないから、ここから身動きがとれないか」


 それはさすがに忙しすぎるもんな。どうにかしないと。

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