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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第10章 盗賊騒ぎと伝説の魔女

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10-9 今日も盗賊退治

 翌日、俺達はギルドの仕事として盗賊退治をする事に。

 別に成果の出ない調べ物の鬱憤を晴らすためとかじゃないからな。そういう意味があったとしても、そんな気持ちで戦いをやると、高確率で痛い目に遭う。

 俺達は人助けでやってるんだ! 報酬を貰ったり憂さ晴らしができるのは、そのついでだ!


 というわけで、依頼のひとつを受ける。街から見て西側、つまり俺達が一昨日来た道に別の盗賊が現れたようだ。

 先日のと同じように、商人が襲われて荷物を奪われたそうな。馬で命からがら逃げてきた商人が、積み荷の奪還のために依頼を出した。護衛達は、多分もう死んでいると思われる。

 それが昨日の事だ。話を聞くに、十人程度の盗賊団とのこと。少し規模が大きい。


「大規模な盗賊団がいなくなったから、その縄張りに他の盗賊が入り込んできたってことかな……」

「そんな。野生動物じゃないんだから」

「ううん。似たようなもの」


 カイの推測に俺が突っ込んだところ、ユーリにばっさりと言い切られてしまった。

 なるほど。奴らは野生動物なのか。まあ確かに、文明がある場所から離れて暮らしてるのだから、似た要素はあるのかも。


 依頼主である商人さんから詳しい話を聞きつつ、俺達は準備をする。襲撃の方法といえば、一昨日の盗賊達と同じ。森に潜みつつ、丸太を用いて進路を塞いで一気に攻めかかる。

 襲われた商人は、俺達が救ったのとは異なり馬車ひとつでやっている小規模の商会だった。護衛の数も少なく、そんな大人数に襲われたらひとたまりもないと。

 ザサルには何度か訪れていて、これまではこんなに規模の大きな盗賊に襲われた事はなかったという。これだけなら十分だという備えに対して、上回る規模の攻撃を仕掛けられた、と。


 明らかに普通ではない。では何が起こってるのかと言えば、一切わからないのだけど。



 商人さんは街で待機してもらうことにした。盗賊の討伐が完了したら呼ぼう。それまでは足手まといにしかならないし。


 街の西門から出る前に探査魔法を使う。ここからなら盗賊団の存在も探知できるから。

 俺達が入った時と同じく、門の前には長蛇の列が出来ている。盗賊からすれば宝の山に見えるかもだけど、その分反撃してくる敵も多い。街の兵士も近くにいるわけだからな。だから、ここで手を出してくることは無い。


 依頼主の商人が襲われた地点は、俺の探査範囲からギリギリ逸れている。仕方ないから門を出て、そこに近付いていく。狼化したユーリに全員で乗って、何かあればすぐに駆けつけられるように。


 ザサルの領内でも、城壁から離れて農村地帯に入り、さらに領の端の方に行けば道をゆく旅人や商人の数も少なくなる。領地の境目ともなれば、領民が通ることも少ないから、そこが盗賊の狙い目にもなる。


 見つけた。ちょうど十人。確かに、領地の境界付近にいた。

 盗賊のうちのひとりが高めの木に登って見張りをしている。あるいは獲物の品定めだろうか。その盗賊団の前を、かなり大きな商隊の列が通っていく。襲っても勝ち目がないと判断したのだろうか。


「なあカイ。盗賊団が襲いがちな商人ってどんなのなんだ?」

「そうだな。金品を持ってそうな商人。それで襲いやすそうな規模。盗賊団の規模と商隊の規模の兼ね合いで、これを襲えばしばらくは遊んで暮らせるぞっていうのを見極める」

「なるほど。まあ、そりゃそうだよな」


 当たり前の事ではある。盗賊団の方をなおも観察していると、見張りの男が何かを見つけたようだ。下にいる仲間たちになにか言ってる。

 奴らは臨戦態勢に入った様子であり、また数人が並んでなにかを運んでいる様子も見える。丸太か。


「そうか。ユーリ、急いでくれ。コータは、狙われてるらしい商人が範囲に入ったら、教えてくれ」


 俺が見たままを伝えると、カイは下を向いてそう伝え、俺達を運ぶユーリは加速した。

 俺は引き続き探査魔法を続ける。見張り役の盗賊の視線の先に注視する。そして探査範囲の中に、一台の馬車が入った。正確には、それに搭乗している三人の人間が。


 なんてこった。知り合いだ。御者として馬車を動かしているのは、ポニーテールが似合う、元気な若き商会の代表。

 そうだよな。盗賊的には積み荷もだけど、女の子がいる商隊を襲いたいって思うものだよな。


「カイ! 奴らが狙ってるのはルファ達の馬車だうわっ!?」


 俺がそう伝えると同時に、ユーリの走りが加速した。あの馬車にはユーリの旧友であるフラウだって乗ってるんだ。あと、サキナっていう魔女も。その魔女はいいとしても、ユーリが急ぐには十分で。


 このまま馬車が進めば、俺達がたどり着くのとルファ達が盗賊の待ち伏せ地点に着くのはほぼ同時といったところか。それでも、ユーリが全力を出してくれているのだから早いほうだ。

 元々、余裕で間に合うとは思っていない。敵を見つける範囲は広いけど、それと比べれば移動速度は常識的なものだし。

 だから相手への牽制として、先日のように空に火球を放って注意を引くなんかの方法を、最初からとるつもりだった。というわけで、俺はタイミングを見計らうべくルファ達の方を注視して……。


「あ。馬車が止まった」

「サキナさんも探査魔法が使えるだろうからな……気付いたんだ」

「でも、だったらルファさん達はこれからどうするの? 引き返すの?」

「どうでしょうね。道を変えるとかはあるかもしれませんけど…………」


 とにかく、知り合いが手の出せない所で凶刃に倒れるなんて惨劇は避けられたらしい。今の所は、だけど。

 探査魔法で見るサキナ達は、その場で停まって話し合っている様子だ。彼女達だって、どうするべきか迷っているのだろう。でもたぶん、このままだと引き返すっていう選択をとるはず。


「できれば共闘したいな。その方が戦うのは楽だ。それか、囮でもいい。ルファさん達には申し訳ないけど、そっちを見ている間に背後か側面から攻撃できる」

「それに、引き返して遠回りさせちゃうのも、ルファさんに悪いしねー。よしコータ! 空に向かってファイヤーボールだよ!」

「はいはい……」


 偉そうに指示をするリゼはウザいけど、その意見はもっともだ。それに、元々やる予定のことではあったし。

 一昨日と同じように、両手を斜め上に向けて心の中で詠唱。巨大な火球が上空に向かって放たれた。森の木々に引火することはなかったし、遠くにいる誰かにもしっかりと見えることだろう。

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