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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第10章 盗賊騒ぎと伝説の魔女

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10-4 盗賊との戦い

 商人達は俺達より早く出発したし、馬車だから移動も速い。ユーリが全力で走っても、追いつくには少し時間がかかる。

 その間も、俺は探査魔法で様子を見続けていた。前にもあったけど、手出しができない距離で行われてる事を見るだけっていうのは、辛いものがあるな。


 商隊は盗賊団に気づかないままに待ち伏せの箇所まで来てしまい、そしてなにか罠でも仕掛けられていたのかその場で急停止した。

 大きな馬車が何台も連なった商隊だから、それだけで混乱が起こる。そこにさらに、盗賊達が攻撃を仕掛けているようだ。森の中に身を隠しつつ、道の両側から弓を使って遠距離から攻撃をしてるのだろうか。商隊の護衛も応戦してるけど、苦戦している様子。


 盗賊は木々を盾にしてるから、護衛側の攻撃が当たらないのだろう。近接武器で打って出るにしても、森の中は奴らの方が慣れた場所。



「ユーリ、急いでくれ! それからコータ、空に向かってでかいファイヤーボール撃ってくれ!」

「お、おう! わかった」


 一瞬だけ意図を計りかねたけど、陽動とかそんな意味なんだろう。急に空に火球が打ち上がったら、誰だってそっちを見るに決まってる。

 それか、近くに敵がいるって盗賊どもに知らせる意味もあるのかも。つまりは威嚇だ。どっちでもいいけど、やらないよりはマシ。


「よーし! コータいくよー! ファイヤーボール!」


 と、リゼが指示してきたタイミングで、俺も進行方向斜め上に両手を向けて詠唱。当然ながら巨大な火球が、前方に向かって飛んでいく。商人や盗賊達の頭上を通る起動だ。


「よし、次は……森の中に入って、背後か側面から攻撃しよう。ユーリ」


 カイの指示に従って、俺達を乗せた白い狼は進路を変更して森の中に入っていく。急いで、しかし音を立てずに盗賊団の位置へ近づいていく。


 木々の間から奴らの姿を視認できた。

 俺の火球は奴らもしっかり目にしたようで、商隊に攻撃を加えながらも、時折周囲を警戒するように視線を動かしている。

 敵の数は、弓を放っているのが十数人ほど。奴らは腰に剣を挿してるから、いざとなれば近接戦もするんだろう。その後ろに、剣を抜いて商隊に襲いかかる機会を伺っているのが数人。

 おそらく道を挟んで向こう側の森にも、同数の敵がいるのだと思う。



 商隊の方は、全員が馬車の荷台の中に退避したようだった。テントみたいに布が張られた荷台に小さな穴を開けて、そこに立てこもりつつ中から弓で攻撃をする。

 一種の膠着状態だ。近接戦闘に持ち込めば、どちらが勝つかは別として決着は早まるだろう。けど、みんな死ぬのは怖いもんな。双方が弓を構えてる場所に、剣で乗り込み相手に切りかかりに行くのは勇気がいる。


 荷台と森の木に遮られて、お互いの姿が見えない状態。弓を射掛けるのは一旦止まったようだ。もし相手の姿が見えれば、そこに向かって一斉射なんだろうけど。


 盗賊達は、そんな標的がいないか。それからさっきの火球の主は何なのかを探るために、相変わらずキョロキョロと周囲を見回している。

 幸い、俺たちにはまだ気付いていない。ユーリの狼化を解かせて、木々に隠れながらゆっくり近づいていく。フィアナは弓を引いて、いつでも射れる構えだ。


 ある程度近付いた所で、周囲に目を向けていた盗賊のひとりがまっすぐこちらに視線を向けた。偶然だったのだろうけど、不運だな。

 風を切る音と共に、フィアナの放った矢がそいつの顔面を射抜いた。


「ウィンドカッター」


 それを合図に、俺も戦闘を始める。森林火災の発生を用心して、使うのは風魔法。炎の矢みたいに一気に多数の敵を同時に狙えるわけではないけど、これでも十分戦える。


 木々の間を縫うように、縦方向に風の刃を放つ。盗賊のひとりに命中して、奴の体が縦に割けた。

 うわ、グロい。こんな殺し方して悪いとは思ってる。本当だぞ。でもお前らも殺人をしてきたんだから、自業自得と思え。


 さっきの火球のおかげか、予想できない方向からの攻撃は奴らも予測してたのだろう。俺達が思ってた程の混乱は起こさなかった。

 敵の弓兵の半分ほどがこっちに向き直り、矢を放ってくる。もしかして、さっきの火球は余計なことだったのかな。

 まあそれでも、奴らの放った矢は木々に邪魔されて俺達には当たらない。俺達が木に身を潜めながら戦ってるというのもあるし。向こうだって同じ方法で商人達を一方的に攻撃してたんだから、卑怯とは言わせない。


 体の小さな俺が体を出して、風魔法で攻撃。

 俺達に矢を射掛けてる相手じゃない。商隊を弓で狙っている盗賊に対してだ。


 フィアナも、僅かの間だけ体を出して、同じように盗賊を射る。狙いをつけるのは一瞬だけなのに、木々の間を縫って敵の頭を正確に射れるってのはなんでなんだろう。敵の狙いはそこまで正確じゃないぞ。

 たぶんこの子、弓の天才なんだろうな。


 そんなことを考えている間に、商人を狙っている弓兵は全員倒してしまった。そして、このチャンスを逃す商人達じゃない。正確には商人じゃなくて、その護衛だけど。


 盗賊団の生き残りの弓兵が商隊の方に向く前に、荷台から複数の武装した人間が出てくる。彼らはすばやく森の中に切り込み、盗賊共を切り伏せていく。

 敵陣は総崩れだ。近接戦に持ち込まれた盗賊達は、みんな弓を捨てて剣に持ち替えた。


 俺達もまた、その戦場に向けて走る。矢が飛んでこないのだから、敵の前に姿を晒していい。

 先行するカイが剣を抜き、近くにいた盗賊を一刀のもとに斬り伏せる。続けざまに、近くにいたもうひとりの首をはね、すぐさま次の敵に向かっていく。


「えへへー! わたし達は通りすがりの優秀な! とても優秀な冒険者です! 手助けしに来ましたからもう安心です! さー! コータやっちゃって!」

「かっこいいこと言いながら人任せにするな!」


 相変わらず調子がいいだけのリゼをたしなめつつ、近づいてきた敵に一発だけのファイヤーアローを食らわせる。至近距離からなら狙いはつけやすい。木々に着火することなく、敵のひとりを屠る。その間にカイはもうふたりぐらい盗賊を切り伏せていたし、ユーリだって狼化して、ひとりの頭部を踏み潰しながらひとりの首を噛みちぎっていた。近接戦闘になったら強いな、このふたり。


 意外にあっけなく、こちら側に潜んでいた盗賊集団は全滅した。よし、反対側だ。

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