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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第9章 山とゴーレム

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9-21 行方不明者の発見

 倉庫の整理を手伝うことぐらいはできるけど、中身の調査となれば俺達は役に立たない。その日は倉庫の中身の運び出しと分類なんかを手伝って、翌日からはシュリー達に任せることにする。その方が向こうもやりやすいだろうし。


 そして翌日。俺達は再び山を登っていた。連日こんなことばかりしてるけれど、あの秘密基地を放置するわけにはいかないからな。

 それにジストが部品を作り出してきたから、洞窟に運び入れなきゃいけない。


 そう。今日こそ、あの洞窟に入らないと。入るぞ。絶対に入るぞ。コウモリはみんな死んでるんだから、何も怖いことなんてない。できる。絶対入れる。俺ならできる。


「無理だ! 怖い! コウモリいる! 嫌だ!」

「うんうん。大丈夫大丈夫。お母さんはここにいるよー」

「お母さんじゃない……。でもここにいてくれ……」


 洞窟の外で岩にもたれながら座るリゼに、俺は抱きしめられ撫でられている。

 別にコウモリの死骸が怖いんじゃない。あの中には実際に、生きたコウモリがまだいるから怖いんだ。


 洞窟に入る前、念の為にと探査魔法を使ったのがまずかった。視界に入る大量のコウモリ。たまらず叫んでしまった。

 先日の焚き火作戦で、コウモリは間違いなく死んだ。今中にいるのは、森に生息していた別のコウモリだ。

 別のコウモリの群れが、なぜか空き家になっていた洞窟に早速入り込んだんだな。なるほど、駆除しても直ぐに新しいのが来るわけだ。どうすればいいんだ。


 なんにせよ、俺が洞窟に入れないのは全員が察したようだ。リゼと俺だけ残って、残りで部品を中の秘密基地まで運び込む。

 ちなみに、街からここまで部品を運ぶのに関しては、特に問題は起こらなかった。狼化したユーリの背中に重い荷物を載せて歩かせる。重いと言っても人間三人分よりは軽いから、ユーリの耐荷重性能としては問題ない。この前道を整備したおかげで、特に障害なく歩かせることもできた。

 洞窟内は手で運んで行くしかないわけだけど、それも四人で持っていけば問題なさそうとのこと。


 俺のせいで、リゼが手伝えないことだけが引っかかる。本当に申し訳ないと思ってる。


「暇だねー」

「……そうだな」


 やることが無くてただ座ってるだけだから、リゼも退屈なんだろう。あるいは俺を気遣って、話しかけてるのかもしれないれど。


「ねえ、この近くに面白そうな物ってない?」

「面白そうな物ってなんだよ」

「変わった動物とか」

「いるかなそんなの……」


 探査魔法で広い範囲を見ることはできる。ここまで自然豊かな森だと、確かにたくさんの種類の生物が住んでるんだと思う。

 でも探査魔法を使ったら、見たくない生物も見えてしまう。例えば、そう。コウモリとか。


 とはいえ、俺のせいでリゼが退屈を持て余すのは正直申し訳ない。というわけで、何か面白いものは無いかと一応見てやることに。


 洞窟の中のコウモリの群れからは必死に目を逸らす。森の中の陰になってる所には、よく見たくない姿の群が集まっていた。

 コウモリがこの世界にいるって自覚した瞬間に、なぜかこの魔法でも目につくようになったんだよな。そこは、知ってる人なら探査魔法で感知できるのと同じ理屈かな。


 そういえば、森の中に巨大なイノシシがいるって噂だっけ。そいつは間違いなく、面白い生き物だ。俺達の安全性にも直結する問題だし探してみよう。できるだけコウモリが目に触れないようにしながら。

 そう考えて、この付近からゆっくりと広域に視界を広げていく。


 そしてイノシシが視界に入る前に、別の興味深い物が目に入った。

 人間だった。俺との縁はあまり深くないけど、一応知っている人間だから誰なのか認識できる。


 俺達が街にやってきたあの日、ジストを取り囲んで蹴っていたチンピラのひとりだった。森のど真ん中で倒れて、動けない様子だ。


 そういえば、こいつを含めた三人が行方不明なんだっけ。


「どうしよう。助けてあげるべきかな?」

「放っておくわけにはいかないか…………」


 助けた所でなにか利益があるとも思えないけど、人道的感覚で言えば見殺しにもできない。

 けれどこいつが、いまだにリゼに恨みを持ってる可能性もあるな。舐めてきた相手に復讐が済んでないから。

 あと、奴がいる場所は森の中で獣道の範囲からは大きく外れている。俺達だけで行けば道に迷うのは確実。

 かといってクレハを同行させるのはまずい。あのチンピラはゲバルの家の関係者で、モレヌドとかいう男と繋がりが深い。そんな奴と関わるのをクレハは良く思わないだろうし、絶対に面倒なことになる。モレヌドがクレハに言い寄る口実ができるとかで。


 見れば、数匹のイノシシがあの男が倒れている近くをうろついていた。イノシシの親子が餌を探してるのだろうか。

 抵抗できない人間なんて格好の獲物だよな。それで人間の味を覚えたイノシシが人里に降りてくるんだよな。


「よし、とりあえずみんなを呼んで相談しよう! ねえみんな!」

「待て! 相談は良いけど中に入るな! ここから呼びかけろ! おいやめろ入っていくな!!」


 ずんずんと洞窟の中に入っていくリゼを、俺はしがみつきながら必死に止める。もちろん止まらないし、俺の呼びかけも聞こえてない。すぐに人を助けなきゃという意志から俺の苦手な事を忘れてやがるなこのバカめ! ああっ! そこに。その地面に転がってるのは二枚の翼が生えたその死骸はぎゃあああああ!!!



 俺の悲鳴で何事かとみんなが戻ってきてくれて、俺は事なきをえた。いや、えてないけど。そいつの死骸をばっちり見てしまったけど。


 状況を説明したところ、クレハは迷いながらも助けましょうと言った。

 とりあえず俺とリゼと、フィアナとユーリでその男の所に向かうことに。フィアナがいれば森の中で迷うことはないだろうし、ユーリは怪我人の搬送役だ。カイはクレハと一緒に洞窟内での作業を継続。このふたりがここにいれば、迷っても探査魔法で帰る方向だけはわかるし。置いてってばかりですまないな。



「こっちですか。ずいぶん奥の方まで行きましたね。なんの用事でしょうね……」


 目印になりそうな物を確認していきながら、フィアナは森の中を慎重に進んでいく。急ぐあまりに、こっちが帰り道を見失ってはまずいから。


 それにしても、本当になんの用事なんだろうな。山に用がある人間には見えない。見かけによらずハイキングが趣味でしたとかでも、わざわざ奥深くまで行くことはあるだろうか。

 まあいい。本人の口から聞くとしよう。

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