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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第8章 北国へ

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8-22 人の恋路

 同性の俺から見て、ユーリがモテるタイプの男かという評価については、ちょっと判断を保留させてほしい。

 俺も元の世界では全然…………そんなにモテていた男ではなかったし。どんな男がモテるのかの知識は専門外だ。


 けれどフラウがユーリの事を好きになるのは、よく理解できる。

 家族以外に同族を見たことがなかった少女の前に現れた、同族の男の子。直感的には、運命の相手って思ってもおかしくはない。ユーリはあれでいて気遣いはできる性格だし、顔は良い方だし。今よりさらに幼かったフラウが惚れる理由は、十分にあった。



 残念ながらユーリとカイは旅人で、ホムバモルに定住を決意することなく旅立った。その間もフラウの中には、ユーリとの思い出がずっと残っていたんだろう。


 そしてこの度、フラウの前にユーリが再び現れた。今度は同行者に女を連れて。


「リゼさんは特にユーリとは特別な関係があるわけじゃない、ただの仲間とお見受けしました。その上で聞きたいんですけど」

「フィアナちゃんのこと?」

「そうです!」

「えっと…………別に、ユーリくんと付き合ってるって事はないよ。うん……」

「本当ですか? いえ。本当なんでしょうけど。でもあの女は、ユーリの事が好きなんですよね?」

「あー。うん。そうだねー」


 リゼの目が泳いでる。



 明らかな事だから、誰も特に言及しなかったこと。フィアナはユーリの事が好き。本人は認めないかもしれないけど、態度からして明らか。


 あのふたり、一緒に行動することが多いもんな。冒険者の先輩として頼りになる所も多いだろうからな。そうでなくても、多感な年頃だ。しかもこれまでのフィアナは、周りには何もない小さな村に住んでいたわけで。

 そこから広い外の世界に出る。そして同じ年頃の男の子と、長く行動を共にする。

 好きになる事もあるだろうさ。



「これは捨て置けませんね…………」

「そっかー。どうしようかなー」


 真剣な表情のフラウと、困ったという顔をするリゼ。

 リゼだって人の恋路は応援したいはず。例えばレガルテとターナの関係とか。あれはまだ、相思相愛のカップルだったからわかりやすかった。

 この手の三角関係では、どうするべきなのか判断がつかないんだろう。俺も同じだ。


「と、とにかく。ユーリくんの気持ちが第一じゃないかな!」

「そうですね。でも、わたしの方が早くユーリと知り合ったんです。しかもあの女はただの人間じゃないですか。同族のわたしが負ける戦いじゃないですね」

「そうかなー。そうかもしれないけど…………」


 ここまで歯切れの悪いリゼは初めて見た。




 そのまましばらく、煮えきらない態度のリゼとひとりでヒートアップするフラウの会話が続いていた。他のみんなが起きてきたから、その話題は打ち切りになったけど。

 大きめのテーブルを囲んでの食事だけど、フィアナもフラウもユーリの隣に座りたがる。

 当のユーリは、相変わらずの無口。表情の変化も少ない。ふたりに好意を寄せられているのに気づかないほど、鈍感な奴ではないと思う。だけど本心がわからない。




 さて。旅の仲間の恋路も大事だが、差し迫った問題にも対処しなければならない。昨夜押収したハスパレの葉に関してだ。


 食事の後で、俺達は揃ってギルドへ向かった。冒険者ではないディフェリアやフラウも当たり前のようについてきているけど、今更気にすることではない。

 このふたりから目を離した方が、面倒なことになるだろうし。



「葉をホムバモルに送るわけにはいかない。だが供給が途絶えたとなれば、奴らはすぐに攻め込んでくるだろう。この街を生かす理由が無くなるからな」


 朝にも会った、ギルドマスターを名乗る男からそう説明を受けた。

 まあ、それはわかっていたこと。そして聞きた限り、状況はどうしようもない所まで来ているようにしか聞こえない。ギルドマスターの説明では、奴らは山からホムバモルへの平地ルートを監視しているらしい。葉を運んでるらしい商人の通行がある程度の期間途切れたら、それが開戦の時だと。


「だからスパレの葉を輸送するふりをして、空の袋を向こうに運び込む。その間に街の防御を固める。そういう方針で行くことにした」


 昨夜俺達が殺したあいつらは、商人を雇って宅配業者のような使い方をして、葉をホムバモルへ運ぶつもりだったようだ。その方針を乗っ取らせてもらい、ただの鞄や袋を大事そうに輸送する。

 敵がこの街の状況をどれだけ把握しているかはわからないけど、葉の輸送が行われている間は手出しをしてこないはず。これで時間を稼いで防衛戦力を集める。


 既に首都には、早めに兵力を送ってくれと、連絡を送っているとのことだ。近隣の街や都市にも、兵士を貸してくれと協力を要請している。ここが落ちれば次はどの街が攻められるかわからないため、ある程度の協力は得られる見込みらしい。周囲のギルドにも依頼を出して、冒険者の戦力を集めているとのこと。


 可能であれば街のあちこちに罠を設置して、この街自体を要塞化する構想もある。あとは非戦闘員である住民の避難とか。やらなきゃいけない事は山ほどある。

 じゃあ俺達が手伝うことはその辺りかなと思ったら、そうではなかった。




「偽の袋を輸送する商人と、護衛の戦力を集めたい。商人については用意ができている」


 なるほど。一番危険な役割だ。ホムバモルを騙し、偽の葉を運んで届けるという任務の性質上、それがバレたらかなり危険なことになる。

 そしてほぼ確実に、早い段階でバレることになるだろう。


 なにしろホムバモルは、葉の管理を徹底している。輸送の担い手から受け取った直後に、袋を開封して中身の確認をする可能性が高い。つまりその場で発覚する。その場合輸送している商人は、運が良ければ捕縛。普通ならその場で殺されるだろう。


 だから、何らかの対処をしなければならない。具体的には、向こうが開封しようとした瞬間に攻撃。その混乱に乗じて逃げるとか。


 なんとも力技な方法だけど、これしかない。ゆっくりゆっくり輸送して、時間稼ぎできた時点で作戦は成功なんだ。後はどうとでもなれ、ということ。


 こんな作戦に参加してくれる商人がいるっていうのも驚きだな。きっと、多額の謝礼が支払われるとかだろう。そして敵を攻撃する冒険者もそれなりの数を集めなきゃいけない。

 このギルドマスターは、俺達にそれを要請してるということだ。もちろん受けるつもりだけど、ギルドマスターはよく考えてくれと言った。


 作戦の決行は明日の朝。その時に商人の馬車がホムバモルへ向かう。その時までに、依頼を受けるかどうか決めてくれと。

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