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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第7章 監査団騒乱

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7-24 横柄な兵士

 フィアナとユーリは、今日も宿の入り口が見えるところに座っていた。

 怪しい獣人がいたらその様子を観察する。レオナリアが来たら、やはり気づかれないよう観察して目的を確かめる。中で問題が起こってミーナ達がピンチになれば、助けにいく。そんな方針。


 今のところ、特に何も起こってない。宿の中は静かだ。獣人解放同盟のリーダーらしき獣人も見当たらない。

 通りは平和だった。獣人の商人が客の呼び込みをしていた。昨日も見たような狼獣人の子供達が追いかけっこをしていた。

 とても、権力者の暗殺なんかの物騒な計画が行われてる場所とは思えなかった。


「ミーナさん、大丈夫でしょうか」


 退屈だったから、隣に座ってるユーリに話しかける。

 あのオロゾという梟獣人の魔法使いは頼りになりそうだけど、それでもミーナはこういうことをするのは初めて。心配にもなる。この場所ののどかさが、逆に不安を掻き立てていた。


「大丈夫。あの人は、あれでピンチには強い……と、思う」


 ユーリはいつものように、淡々と返事をする。その言葉は素っ気ないものだけど、彼なりに真実を語っているというのは知っている。


「そ、そうですよね! きっと大丈夫ですよね!」

「例えば、なにが急に起こっても、リゼみたいに慌てたりはしない。それだけでも、だいぶ違う」


 フィアナの不安を軽くしようと思ったのか、ユーリは言葉を続けた。

 ピンチに陥った時のリゼの慌てようを思い出して、フィアナは思わず吹き出してしまった。


 変な悲鳴をあげながら逃げ惑って、使い魔に助けを求める。頼り甲斐とは程遠い姿。多くの人から驚かれる魔法も、使い魔のコータがやってるものだ。

 そんな無能だけど、少なくともコータと一緒に多くの危機を乗り越えてきた。フィアナの命を救ったこともある。

 無能は無能だけど、少しは頼ってもいいって思える無能だ。そんなリゼをフィアナは好きだった。たぶん、ユーリも同じ気持ちだろう。


 不安はいつの間にか消えていた。


 そのまましばらく、また平穏な時間が流れた。

 今度はユーリから、その静寂を破った。なにか見つけたらしい。


「見て。あれ」


 探している獣人かレオナリアが来たのかと思ったけど、そうではなかった。


 兵士達の一団。全部で四人いる。

 この街の兵士じゃなくて、リゼの兄達先遣隊と一緒に来た護衛の兵士だ。装備の違いでそれはわかった。


 突然やってきた見慣れぬ武装した男たちに、通りは静まり返った。その目的がわからず、獣人達は不安そうな様子を見せる。

 兵士達は宿屋の前で立ち止まり、互いに顔を見合わせてから中に入っていく。


「フィアナ、行こう。きっと、問題発生」

「は、はい!」


 なにが起こっているかはわからないけど、このまま平穏には済みそうにない。ふたりは立ち上がり、ゆっくり宿屋の方へと歩いていく。何事かと野次馬達が集まりつつあって、その中に紛れ込んだ。

 野次馬達の多くは獣人だけど、人間も何人か混ざっている。フィアナとユーリのことを気にかける者はいない。


 宿屋のカウンターで、若い兎獣人の女が慌てたように兵士達を出迎える。彼女は混乱しているようだが、構わず兵士達は威圧的に言った。


「この宿に、不穏分子である獣人解放同盟の人間が多数潜伏しているという情報が入った。よって強制捜査を行う。いいな? 宿泊客を全員集めろ!」

「あ、あの。待ってください、いきなりそんな……」

「問答は無用だ! 首都からの客人を攻撃する計画があるとの情報を掴んでいる。捜査を拒否するなら、国家反逆罪でお前を逮捕する! この宿も営業許可を取り消すぞ」


 狼狽している若い従業員に、畳み掛けるように脅し文句を告げる兵士。

 この横柄な態度を取る兵士達に、野次馬達から怒号があがり始めた。

 普段目にするこの都市の兵士達とは装備が違うということにも、野次馬達は気づき始めたようだ。市民の安全を守ってくれてきた兵士とは別の、得体のしれないなにか。それに対して慎ましい態度を取ろうと思う獣人は少ないようだ。


 そんな外の野次馬達の様子など一切顧みず、兵士達は続ける。


「そういえば……獣人解放同盟の幹部には、若いウサギの女がいたと言うが……まさかお前じゃないだろうな?」

「ひっ!?」


 あらぬ疑いをかけられ、宿屋の従業員である女は悲鳴をあげた。

 そんなはずはないだろ。そいつは前からずっとここで働いてたぞ。そんな声が野次馬から投げられる。


「横暴です! いくら首都からきた兵士さんとはいえ、あんまりです! ユーリくん、ここはわたし達も抗議をすべきではないでしょうか!」

「落ち着いて。本来の目的、思い出して。ミーナとオロゾさんを助けるのが、優先」

「あ。そ、そうですよね。どうしましょう」

「こうなったら、情報収集なんて、もう無理だね。だから、ふたりを外に出す」

「はい。何をすればいいですか?」

「今から三百、数えたぐらいで、僕がこの場の人達の注意を引きつける。その時に宿の裏口から、ふたりを連れ出して。……後は、ギルドの建物で合流」

「わかりました。三百ですね。じゃあ、いってきます。いち、に、さん…………」


 ユーリがローブを脱いでフィアナに渡した。

 数えながら、そして受け取ったローブを羽織りながらフィアナは野次馬の群れを離れ、宿屋の裏手に走る。野次馬達は兵士の横暴に怒り狂い、宿屋になだれ込む寸前だった。




――――――――――――――――――――



 若い兎獣人の従業員と兵士達のやりとりを、食堂にいたミーナ達も耳にしていた。虎獣人と兎獣人の二人組も、食堂から出ようとしていたのを止めて、扉の影に隠れて様子を伺っている。

 兵士達は獣人解放同盟の幹部を探している。このふたりがそうであるかは別として、特徴が一致したこのふたりが出てくれば、確実に面倒なことになるだろう。

 ということはこのふたりは、獣人解放同盟の幹部の情報を知っているということなのだろうか。

 いやでも、兵士は兎獣人を探していると言っていたし……。



 ミーナだって詳しい様子を知りたかった。というわけで監視対象に近づく危険は承知しつつも、自分も食堂入り口近くまで移動して様子を覗き見る。

 兵士の恫喝のような問答は続いており、若い従業員は泣き出しそうだ。さすがにかわいそうになってきた、その時のことだった。



「おい、そこまでにしないか。そんなヤバい組織の幹部が街の宿で働いてるはずないだろ」


 兵士達をたしなめる声。力強く威勢のある男の声だった。


 客室の方向からやってきたと思しき、壮年の狼獣人がそこにいた。

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