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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第7章 監査団騒乱

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7-22 獣人宿へ

 ギルドに入ったフィアナは、さっそく目的の人物を見つけたようだ。フクロウのような顔をしている男性。

 フィアナはその男性に向けて、笑顔で手を振りながら声をかける。それからユーリは、こっちに一言声をかけてカウンターの方へ行ってしまった。


「じゃあ。僕は依頼、出してくる」

「はい、お願いします!」


 ミーナはどっちに付いていくか迷った末、フィアナの方に行った。

 あのユーリっていう男の子は、ちょっと取っ付きにくい印象がある。悪い子じゃないのだろうけれど、どっちかといえばフィアナの方が親しみやすい気がした。



「こんにちは、フクロウさん。昨日はありがとうございました」

「ほっほ。儂の教えたこと、どうやら役に立ったようじゃな、子供達よ」

「はい! なんといいますか、探していた物の手がかりが見つかりました! ええっと、それで。実はですね、フクロウさんにもうひとつお願いがありまして。仕事を依頼したいのですが、いいですか?」

「ほー。良いでしょう。話を聞きましょうぞ」



 フィアナは簡単に、今回の件のあらましを説明した。城主からの依頼の一環だから報酬は城が払ってくれるとの説明で、その梟獣人はかなり興味を持ったらしい。


 フィアナ達はこれまでの事件において、一定以上の活躍をしていて城主からの信頼も厚い。そのことをこの梟獣人も知っていたらしい。だから信頼できる話だと受け取ってくれた。城が報酬を払うなら、貰い損ねることもないだろうし。


 ミーナと一緒に獣人宿に入って、特定の獣人がいないか探ってくる。その仕事内容を、梟獣人は承諾してくれた。フィアナは笑顔になってユーリに声をかけ、両手で大きな丸を作った。



――――――――――――――――――――



 ギルドのカウンターへと向かったユーリは、受付嬢のお姉さんに声をかける。

 人と話すのは正直苦手だけど、この中でギルドに一番詳しいのが自分なのだから仕方がない。


「こんにちは、おねえさん。僕はギルドの冒険者、ユーリです。依頼を出しに来ました。冒険者を雇いたいです」


 昨日の梟獣人を雇って、あの宿を調べる。あの獣人だって冒険者だから、頼むなら報酬を出す必要がある。

 そして報酬が出る仕事なら、ギルドを通さなきゃ怒られる可能性があった。


 一杯奢るからちょっと頼まれてくれ、程度のことならお目こぼしされるかもしれない。でも、これは城から頼まれた仕事だ。筋を通した方がいいとカイが言っていた。

 カイが言ってたなら、ユーリには反対する理由はない。


 フィアナがこっちに、了承してくれたと合図を出していた。ユーリは頷くと、受付のお姉さんに向き直る。


「あの、フクロウの獣人さんに、人探しの依頼です」


 依頼する相手を指定することは、何の問題もない。受付のお姉さんは、ユーリの言ってる内容の通りに書類を作成していった。さすがプロで、口数が少ないユーリの説明から必要事項を過不足無く拾い上げていく。

 そんな感じで、用事はつつがなく終わった。



――――――――――――――――――――



 そして今、ミーナは梟獣人と並んで歩いている。向かう先は当然、獣人達がよく泊まるという宿。

 さっき初めて対面した相手と共に未知なる場所に向かう事に、ミーナの不安は増すばかりだ。


 思い出されるのは、エミナルカという名前の商人。

 あの人は悪人だったけど、ミーナを心配させるようなことはしなかった。一緒に旅に出ようと言ってきた時も、必ずミーナのことは守ると断言してくれた。

 でも結局あの人は嘘つきで、ミーナに言ったのは都合のいい甘言だった。商人らしい、口がうまくて人を乗せるという技術にすぎなかった。



 そして今、フィアナは大丈夫だと言っている。ユーリも、いざとなれば守ると言ってくれる。それはエミナルカの口にした言葉とは違う風に、ミーナには思えた。


 どう違うのかはわからない。でも、信頼する価値はあると思う。


「震えてるね、ミーナ。大丈夫、きっとなんとかなるさ」

「本当かな……不安しかないんだけど」

「ほっほ。若いうちは何事も、不安を感じて慎重なぐらいがちょうどいいぞよ。安心せい、いざとなれば儂も助ける」

「はい、お願いしますオロゾさん……」


 肩の上のトニと、梟獣人のオロゾも勇気づける事を言ってくれる。いまいち気が晴れないけれど。


 ずっとフクロウさんと呼ぶのは失礼だから、先程彼に名前を聞いた。別にフクロウさんでも良いぞよと笑いながらも、オロゾという名前を教えてくれた。悪い人ではないのは、なんとなくわかる。


 振り返ってフィアナとユーリの方を見た。ふたりは、ミーナ達とは距離をとって後ろの方を歩いている。一見すると無関係の子供達を装って、いざとなればサポートするという役割だ。

 フィアナはミーナの視線を感じ取り、笑顔で親指を立てる仕草をした。大丈夫ですとでも言ってるのだろうか。ユーリは相変わらず反応が薄い。


 ええい。仕方ない。ここまで来て引き返すのも無理だ。やるだけやってみよう。ミーナはそう決意をするのだった。



 その宿は、建物の作りとしては普通の宿屋と何も変わらない。

 建物の正面口から入ってすぐにカウンターがあり、そこで宿泊等の受付。そこを左に曲がると食堂がある。宿屋によっては右側にあったりもするけれど、左の方が多いらしい。この宿もそこは同じ。

 受付の右側及び階段を登った上階に、宿泊用の部屋。この建物は三階建てだ。その他事務所や物置なんかも、建物内のどこかにあるはず。 



 その手の宿屋は慣れているらしいオロゾは、普通に入っていく。ミーナは物珍しさからあちこち見回していて、少し遅れてしまったが慌ててついていった。


 フィアナとユーリは宿の外で見張りだ。宿に獣人解放同盟の指導者と思しき人物が出入りしないかを見る。昨日と同じ。

 ミーナ達がトラブルに巻き込まれたら助けに入ると言ってくれてるけど、今は離れた場所にいるというのがミーナにはとてつもなく不安だった。

 この上オロゾとまで離れたくはない。


 事前のオロゾとの話し合いで、ミーナは旅をしながら修行中の魔女ということになっている。そして獣人の人探しのためにここを訪れて、オロゾにその手伝いを頼んでいるという設定だ。

 旅の者は、この手の宿屋を珍しがったりはしない。もっと堂々としなければ。大丈夫、なんとかなるはず。基本的にはオロゾがやることに任せて、ついていけばいいだけ…………。

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