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転移使い魔の俺と無能魔女見習いの異世界探検記  作者: そら・そらら
第7章 監査団騒乱

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7-18 襲撃の方法

 ミーナによる援護で、逃げる男とカイとの距離はぐんぐん縮まっていく。

 初めて組んだにしてはいいチームワークだと思いながら、カイは男に手を伸ばした。ローブを掴むと男はまた悲鳴をあげ、着ているそれを脱ぎ捨ててまた逃げる。カイもローブを投げ捨て追いかけた。


 そして男は、ある建物の前で唐突に止まる。そして閉ざされたドアを叩きながら叫んだ。


「おい! 俺だ! 助けてくれ! 入れてくれ! 追わ――」


 そのタイミングでカイが彼にタックルする。なおも抵抗して杖を使って詠唱を試みる男に、カイは顔面を殴るという形でこれを止めた。

 それから杖を奪い、遠くに投げる。もう数発顔を殴ってから立ち上がり、最後に男の腹を思いっきり踏みつける。

 やりすぎたかなとも思うけど、これで相手の戦意は喪失された。男はただ、うずくまって痛みに耐えながら泣いているだけ。


 とりあえず重要そうな人物を確保できた。けれど本当にこの男が昨日の襲撃犯なのか、カイは少し自信がなくなってきた。


 小物すぎる。不穏分子達はやってることの是非はともかくとして、彼らなりにそれぞれ高潔な思想を持っている。信念があるはずだ。

 しかしこの男からは、それが感じられない。追われて殴られてメソメソ泣き始める自分よりも年上の男に、噂に聞く不穏分子の姿は見当たらない。


 それでもこの男は、間違いなくこちらを攻撃してきた。昨日の襲撃に関与してるらしいことも言っていた。調べる価値はある。

 ミーナがこっちに走ってくる。よし、ふたりで運ぼうか。この場合、保安部隊の本部か城か、どっちに行けばいいんだろう。


 追いかけっこや爆発音が騒ぎになって、城の兵士が何事かと訪ねてきた。保安部隊も向かってるのかもしれないが、兵士の方が早かった。

 よし、城にしよう。運ぶのはあの兵士達に任せよう。



――――――――――――――――――――




 宿へと戻りながら、俺とリゼは敵がどんな攻撃をしてくるかを予想し話し合っていた。とはいえリゼにはそんなこと考えられないようで、もっぱら俺ばっかりが話してるんだけど。

 お嬢様育ちの女の子には、テロとの戦いの知識などないのか。



 この世界に、テロリズムとかテロリストなんて言葉は存在しない。だから不穏分子なんて言葉を使ってるわけだけど、意味するところは同じ。

 だから俺の世界のテロリストのやり方を考えればいいわけで…………。


「最初に思いつくのは爆弾かな」

「ばくだん? なにそれ?」

「もしかしてこの世界にはないのか? えっと、火薬とか、あと化学反応とかの力で誰でも爆発を起こせる装置だ」

「かやく?」

「この世界には火薬もないのか……?」


 ないのかもしれない。確かに銃はおろか大砲の類をこの世界では見たことがない。火薬の発明って中世とかなんだっけ。だったら、この世界ではまだ発明されていないのかも。


 火薬はなくとも、爆発魔法というものは存在する。昨日の襲撃に使われた魔法がそれだ。

 それに、炭鉱なんかの粉塵爆発事故なんかもあるだろう。小麦粉なんかでも起こる現象だし。とにかくそんなわけで、爆発という言葉自体は存在する。

 そして昨日みたいに、魔法によるテロということは十分に考えられる。この世界で言う爆弾テロだ。



「そっかー。魔法を使った攻撃かー。だったら、魔法使いが近くにいたら気をつけないとねー」

「そうだな。知り合いじゃない魔法使いがいたら注意だ」


 実際のところ、魔法はテロに使いやすい力だ。それに魔法使いは数が少ないから目立つ。

 最近街にやってきた余所者がいれば、そいつが不穏分子である可能性は高い。例えば冒険者をやりながら旅をしているという名目で、この街に入ってきた奴とか。それが不穏分子の隠れ蓑な可能性がある。



 そういう相手なら探し出しやすい。とはいえ別の懸念事項も思いついてしまった。



 この街には、権力に近い立場にいた魔法使いが多かった。それは先日の政変で権力の座からは転げ落ち、高い地位にいた者は投獄されることで数を減らしたというのはある。しかし、両名門の家の人間ではあるが投獄されなかった者は多い。

 例えばレガルテやターナみたいに、政変に協力した人間だからというなら話は簡単だ。味方なのだから。ミーナみたいに、年が若いから罪に問われなかった者は多少警戒するべきだろう。彼女も騙されて悪事に加担した事実があるのだから。


 けれど一番の問題は、名門に所属している大人で投獄されていない人間だ。そういう者も大勢いる。名門の中枢にいるほど歳を取っていないが、かといって若者でもない人間。あるいは、捕縛されるほどの実力が認められなかった者。

 そういう者が再び権力を手に入れることを夢見て悪事に加担するというのは、容易に想像ができることだった。そのことはこの都市の新しい権力者達も、危惧して警戒していたこと。


 そして不穏分子は武器を現地調達する可能性があるというのを、さっき考えついた。魔法使いはそれ自体が武器みたいなものだ。だったら、不穏分子がこういう魔法使いを現地で雇う可能性もあるかもしれない。


 それこそ、エミナルカという商人がやったように。

 前例があることだから、城もそこは警戒しているかもしれない。でも一応は、後でまたターナに言っておいてもいいかもな。



「ねえコータ。他にはどんな攻撃があるの? その、コータの世界のテロっていうのは」

「そうだな……」


 化学兵器とか細菌兵器を使ったテロというのもあるけれど、この世界ではありえない気がする。


 この世界にも化学反応とか細菌っていうのは存在するはず。病気が流行ったりするのは、よくあることらしいし。

だが、それを兵器として使うほどの知識は、この世界にはまだない。そこまで技術が発展していないから。


 となると、他のテロの方法としては…………。


「乗り物を乗っ取って、建物とか人に突っ込ませる……この場合だと、首都のお役人達にぶつけるのもありだな」

「乗り物? つまり馬車ってこと?」


 そうだな。この世界の乗り物って言えばそれぐらいか。こいつで事故を起こすというのも、前回の事件で使われた手口でもある。あの時は確かに、人を殺せた。

 

 俺の考えていた光景よりはずっと小規模な破壊行為だが、それでもテロにはなる。

 もっと大規模な破壊を行いたいなら、馬車の規模を増やすとかすればいいのだろうか。

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