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第4話 閑話をやるにはまだ早い

 復活!

 俺、復活!


 あまりに唐突で申し訳ない。

 つい昨日までゲロを吐いて中二病を発症しアンニュイな気分に陥っていた脇役モブこと椚木鋼だが、一日寝て元気を取り戻した。

 感情の起伏が激しいって? HAHAHA、思春期ってこういうもんだヨ。


 本来なら閑話でも挟み、時間的にも間を置くべき場面だが、そうも言っていられない。時間ってのは辛くても楽しくても平等に過ぎていくもんだ。

 などと、誰にしているのかも分からない言い訳を脳内で繰り広げている時点で、俺はまだ万全とは言えなかった。取りあえず、公衆トイレの主、便器破壊してごめんなさい。


 そんなわけで清々しい気分とはまだ言えないが、何とか活動可能な状態まで回復した俺は、しっかりと登校時間に起床し、通学路を歩いていた。うん、そう……また遅刻しそうなんだ。

 登校時間に起きるってことは即ち準備時間=遅刻時間ってなるからね、仕方がないことなんだよね。うん。


 ふとスマホで時計を見ると、うん、9時、結構のんびりしてたなぁ。普通に遅刻してる。朝シャワーしたのが良くなかったのかなぁ……


「っと、着信が残ってる」


 それは快人からのものだった。昨日の夜ならば分かるが、残っている時間は今朝の7時だった。一応メールが残っていたので確認すると、


『お前昨日鞄忘れたろ。俺んちに置いてあるから取りに来い』


 そう書いてあった。


 ああ、そういえばそうだった。身軽だと思ったのは実際手ぶらだったからなんだ。


『悪い、今気が付いた。教室持ってってくれてる?』


 快人は授業中だろうけどメールを飛ばしてやった。あわよくばマナーモードにし忘れていて怒られろ。この時間は国語。それも担任の授業だ。担任は若くて美人だが婚期を焦っていて狂暴化しているというこれまたテンプレ感溢れる教師なのでさぞ怒られることだろう。クックックッ。



 あれ?

 待てよ?


 考えてみると、メールがバレたら怒られるのむしろ俺じゃね?

 授業時間にしっかり教室にいないで呑気にメールなんて打ってるんだから。


 いやいやいやいや、それはマズい。二日連続でお叱りを受けるのはマズい。これじゃあ親友モブなんかじゃない。ただの問題児だ。ちょっと手のかかる駄目な生徒で、下手すれば先生ルートまっしぐら。

 確かに親友モブが担任(ハーレムヒロインでない場合に限る)に恋していて無残にフラれるというのは閑話として有ってもいいネタだ。実は親友モブも人間味があっていい奴なんだなぁと同情票を集めるきっかけになるわけだ。

 だが、それは時期尚早というもの。今そんな閑話を挟めば、早々に親友モブのエピソードを消化しきって、碌に主人公のサポートが出来ないままフェードアウトしてしまうかもしれない。それはマズい。


 先ほどとは一転し、バレるんじゃねぇぞ……と念を送ること数分、ピロリンとスマホが鳴った。


『まだ家にある』

「おっ、おお……お?」


 先生にバレていたら電話が来るはずだからメールの時点でセーフ! と浮かれようとして、文面を見て固まる。まだ家? マダイエ……?


「まだ家!?」


 つまり、綾瀬家に俺の鞄は置き去りになっているということか!?


『光がいるから取りに行けよ』


 アイエエエエエエエエエエ!?

 続けて来たメールに俺は思わず叫びそうになった。おあつらえ向きすぎる! 気が利きすぎる! よくない方向で!


『なんでだよっ!』

『何か具合悪いんだって』


 そっちじゃねえよ! そっちもだけど!


『いや、持ってきてくれよ学校まで!』

『やだよ面倒くさい』

『具合の悪い妹に俺の接客させるつもりか!?』

『光は大丈夫って言ってたぞ』


 どういうことだよ! 何が大丈夫!? 聞きたくないわそんな情報!

 ええい、埒が明かん! こうなりゃ……と思ったところで快人から着信が入った。ちょうどいい、流石は親友。俺もかけようと思っていたところだ。気が合うねぇボクたち。


「おい、快人! お前なっ」

『椚木』

「……ぇ」

『昨日の今日で遅刻とはいい度胸だな、ええ?』

「しぇ、しぇんしぇ?」

『事情は聞いた。鞄を取ったらさっさと学校に来い』


 なんで事情聞いちゃってんの? 何ちょっと融通利いちゃってんの? すぐに来いでいいじゃん!


『返事は?』

「はひ」


 先生からのお達しともあればいよいよはぐらかすわけにもいかなくなってしまった。

 血の気が引いていく思いの中、電話の向こうからは、「ありがとう綾瀬」とか言いながら先生が快人に電話を返している声が聞こえた。


『あー、じゃあ切るな』

「うっせー馬鹿! 先生に親友売りやがって! くっそーあの行き遅れババアめ! 若者の自由をひがみやがって!」

『鋼……』

「んだよ!」

『ごめん、これスピーカー』


 プツッと電話が切れた。








「え」


 最後の言葉の意味を理解するのには随分と時間を要した。

 つまり、あれだ。そういうことか? そういうことなのか?いやいやいや、あれれ? おかしいぞ?

 スピーカー? スピーカーだった? それって、最後の暴言を聞かれたってこと? あの年増に?


「あ、死んだ、俺」


 間違いなく怒りの鉄拳が飛んでくる。体罰なんて無い。あるのは理不尽だけ。

 これから快人の家で妹ちゃんから鞄を受け取り、その後折檻を受けに学校に行かなければならない。


「厄日だ・・・」


 なんて日だ! さすがフランス!(※日本です)

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