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日めくりカレンダー  作者: 流美
4月の日めくりカレンダー
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「離れないで」


「ねぇ、だから、言ったじゃん」


 冷たくなった目の前の君は、優しそうな笑みを浮かべている。痩せこけた頰と、抜けて無くなったまつ毛と、カサカサの唇と、それから。

 私の手を握りしめたままの、木の枝のような手。


「逝かないで、って、言ったばっかじゃん、ねぇってば」


 何も考えられない。思い出せない。一瞬にして、全てが無くなってしまったよう。涙なんて出ない。今私は、どうしてこんなことを口走っているのかさえも、分からないんだ。

 白いベッド、電源の切られた機械。開いた窓から入ってくるそよ風と、窓の外に広がっている青。側に置かれた、咲いたばかりの花々も。


「ねぇ……」


 最期に君は、見え見えの嘘を吐いた。息を止める直前、ずっと一緒だよ、なんて、ありもしないことを笑って言った。それがどうしようもなく悲しくて、寂しくて。心臓が握りしめられてるように痛いし、肺が潰されてしまったみたいに苦しい。


「離れないで…………」


 ようやく溢れた涙は一粒だけで、君の手の甲を濡らした。もう、動かない。

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