コンソメスープ
昔、好きな人が作ってくれたコンソメスープの味を、私はまだ覚えている。玉ねぎと人参とソーセージがたっぷり入っていて、幸せだったコンソメスープ。あまりの美味しさに、一口食べるごとに満面の笑みを浮かべていた。
――ほんと、美味しそうに食べるよね。
そして、好きな人も私のことを嬉しそうに見つめていた。その表情を見ると、私もなんだか嬉しくなって、満面の笑みが更に溢れてしまう。
また食べたいなぁと、幸せだったそのひと時を思い出しては思う。私は、パソコンをいじる彼の脇腹をつついた。
「ねぇ、昔作ってくれたコンソメスープ、覚えてる?」
「昔……? 覚えてないわ、どした」
「もっかい食べたいなぁって。ね、作って」
「唐突だなぁ」
今、あの日の好きな人は夫となって私の隣にいる。苦笑いでパソコンを閉じた彼は、クローゼットを開けた。
「昔と同じのは作れないだろうけど、コンソメスープくらいなら作るよ」
「やったぁ!」
「ほら着替えて。一緒に買い物行こ」
その場から立ち上がり、クローゼットの中から私も服を取り出した。懐かしいあの味を再び思い出して、あったかいなぁと、ふと感じる。
帰ってきて作ってもらったコンソメスープは、昔と同じ味だった。




