夢
暗くて、怖い、夢を見た。だけど悲しくて、寂しい、夢だった。
ぽつり、立っていた。薄暗い森の道。前も後ろも闇に落ちていて見えない。しかし空は淡い青が広がっている。
寒気を感じる。側に湖があるような、ひんやりとした水の寒さ。肺の中いっぱいに深呼吸を繰り返し、ぼーっとした頭に思考を巡らせる。
ここは何処なのか。何故ここにいるのか。あぁ、分からない。心では考えようとしているのに、頭では何一つ考えられない。
ぼんやりとした意識。足の先、手の先から、闇に包まれるような気がした。ふと、怖くなった。
体が闇に飲まれていく。逃げられなくなっていく。動けない。体の芯から、闇に染められていくよう。
怖い。何が怖いのか。怖くない。怖い。分からない。
意識ははっきりとしないまま。ただ手足が動かなくなり、あぁ、闇に飲まれたんだな。仕方ないかと諦めた、とき。
今度は寂しさが襲ってきた。闇に飲まれた体を包み込むように、寂しさと、悲しさが、同時に蝕んでくる。
この状況が、悲しくて仕方ない。この状況が、寂しくて仕方ない。仕方ないと思う訳も、分からないけど。
そっと目を閉じた。体を包み込んできた闇と寂しさと悲しさが、眠りを誘っているような錯覚だった。
気絶するように意識が飛ぶ。この世界からお別れだと、直感的に分かった。さよならと呟く口は、動かない。
目覚めたそこは、布団の上。毎日見上げている天井と、薄暗いカーテンの向こう側。戻ってきたのかと、一息を吐いた。
もう二度と、行きたくない世界だ。




