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日めくりカレンダー  作者: 流美
2月の日めくりカレンダー
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殺人者じゃないのに



 クラスで人気者の、可愛くてオシャレな女の子に呼び出された。教室がざわつき、あちこちから噂話がたつ。6年1組から正反対の場所にある、たまぁに使われる教室に、僕はその子と並んで向かった。


「なんで呼んだの?」

「分からないの? 鈍感なんだね」


 ふふ、と小悪魔のように笑ったその子。心臓がどきどきと煩くて、その子の目をまともに見ることができない。手汗がいきなり出てきて、握りしめた拳が湿っぽい。


「あのね」

「……うん」


 その子はかなり言いにくそうで、無理やり吐いた溜息のような声だった。静寂に包まれているこの教室が、とにかく居心地悪い。その子の次の声まで、時間の流れが遅くなっているような錯覚に陥る。


「好きです」


 顔が紅潮していくのが分かった。足や手が小刻みに震えて、ふざけるなと言い返してやりたかった。そんな声は、僕は持ち合わせていないけど。


「ごめん、戻る」

「……だよね」


 その子は僕のこと、小学4年生までずっと虐めていた。学校が楽しくなくて、何回も休んだ。だけど次第に休むと虐めが悪化することに気付いて、休むこともできなくなった。

 許せるわけがない女の子なんだ。


 その子を置いて教室を出る。悔しいような、寂しいような、忌々しいような、変な感情を抱いたまま、廊下をとぼとぼと歩く。途中でトイレに寄って、1組の教室に戻った。


 窓の外を見ているクラス全員。戻ってきた僕に気付いたクラスメイトが、僕を指差して声を張り上げた。


「きたぞ、殺人者が!」


 聞いた話によると、僕が教室を出てすぐに、彼女は窓から飛び降りたらしかった。

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