もしも寿命が見えていたら
「もしも私が、貴方の寿命を知っている……なんて言ったら信じてみる?」
隣を歩く貴方の腕を引き、足取りを止めた。真っ直ぐに瞳を見つめて、つい今まで笑って話してたとは思えないほどに真剣な表情を向ける。貴方は突然の言葉に、困惑した様子を隠せないよう。
貴方の首筋に縦に浮かぶ数字。物凄い早さで数は減っていき、0になるまでにあと2日も無かった。正確に言えば、あと34時間とちょっと。誰かに教えてもらったわけではないけれど、それが寿命だということを私は何故か知っていた。
「……いきなりどした?」
「なーんてね、冗談だよ! ……気にしないで」
貴方の腕にぎゅっと絡みつく。まだ困惑している様子だけど、貴方は優しい手付きで私の頭を撫でてくれた。離したくない。離れたくない。
貴方の寿命をどうにか伸ばせたら良いのに。
*
心臓が跳ねた。お前も寿命が見える奴なのかと、びっくりした。冗談って誤魔化されたけど、どこか寂しそうで苦しそうで。
俺の彼女の首筋に、縦に浮かぶ数字。残り時間は後67時間と少し。明後日が終わる頃、彼女は死ぬ。死因は知らない。
気付いたときには遅かった。離れたくないと願っても。彼女の寿命を、どうにかして伸ばしたい。




