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日めくりカレンダー  作者: 流美
2月の日めくりカレンダー
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離したくない

「手、離してよ」


 この人は馬鹿だ。俺といたら、不幸になるからって私のこと突き放したくせに、私を抱きしめたまま離してくれやしない。むしろ一声かけるごとに腕の力が強まり、息が止まりそう。

 身動きが取れない。呼吸も浅い。だけどこの人の体温は心地良くて、安心する。力を抜いて、身を委ねた。それでも当然、この人は腕に力を込めたまま。


「ごめん」


 何に対してのごめんなのかは、さっぱり分からない。けどなんか、悔しそう。自分で突き放しといて、全く離す気なんてないんだから笑っちゃう。


「ほら、離してよ」


 ビクともしないこの人の体を、微弱な力で押してみる。案の定、更に強く抱きしめられてしまった。そろそろ肺が潰れて苦しい。もう、と一拍置いて、この人の腕の中から自分の腕を逃す。そしてこの人の背中にそっと手を回した。


「なんなのよ」

「…………離したくない」

「さっきは突き放したくせに?」

「ごめん……俺、ワガママ言ってる」


 ほんと、ワガママなんだから。

 ふっと笑って、回した手に少しだけ力を入れた。この人にギリギリ伝わるかな、くらいの力加減。伝わったのか否か、この人は優しく、力を緩めた。


「離さないでよ、ばか」


 直後、耳元で囁かれた「ありがとう」と「愛してる」の言葉。くすぐったく感じながら、幸せを噛み締める。




 私がプロポーズされたのは、この日から2日後のことだった。

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