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日めくりカレンダー  作者: 流美
2月の日めくりカレンダー
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朝の味噌汁

 久々に、朝早く起きた。まだ陽が昇っていない、薄暗く寒い時間帯。それは、ほんの僅かな思い付きだった。


 昆布と鰹節で出汁を取り、2分の1の玉ねぎを薄切りにする。出汁が沸騰したら玉ねぎを入れて、透明になるまで待つ。それから味噌をといて、沸騰させないよう気をつけながら完成。


 簡単なんだけど、面倒くさがりな俺にとっては手の出しづらいもののイメージがあった。ご飯を茶碗によそり、テーブルの上に並べる。いつもはつけるテレビも、今日はつけなかった。


 両手を合わせ、静かに「いただきます」

 ご飯と味噌汁だけの、あまりにも簡素な朝飯。それでも、味噌汁に口をつけた瞬間、ふと脳裏には"彼女"が浮かんできた。


 つい数ヶ月前まで此処で、毎朝ご飯を作ってくれた彼女。味噌汁とご飯と、もう一品。作り終えた彼女は、バイトに行く。


 まだ大学生の、若い娘だ。両親を突然亡くし、親戚とすぐに連絡が取れなかった為に、路地裏で壁に寄りかかっていた。その姿は寂しげで、悲しげで、当たり前だけど、とにかく苦しそうだった。


 つい声をかけてしまった時、下心は本当になかった。だが疑われても仕方ないなと思っていたのだが、彼女はすんなり着いてきてしまった。


 家に帰って、簡単な食事を用意する。彼女はまだ晴れない表情だったが、少し落ち着いたのか、一筋の涙を零しながら美味そうに食べてくれた。


 それから彼女は、親戚と連絡がつくまで此処で暮らしていた。彼女の家庭力はなかなかのもので、毎日朝ご飯と昼の弁当を用意してくれた。夜ご飯までは流石に任せられなかったので、夜は俺が担当したが。


 実家を離れて何年も経つ俺にとって、人が作った料理というのは感慨深いものであった。毎日きちんと感謝を伝え、美味い飯を作ってもらっていた。


 だが数ヶ月前、彼女は親戚と連絡がついた。俺と出会って、たった1週間とちょっと。親戚の誘いに甘え、彼女は親戚の家にお邪魔するとのことだった。


 短い間でしたが、ありがとうございました。

 彼女はそれだけを言い残して、あっという間に行ってしまった。仕方ないことだと理解していても、その短い間が忘れられない。


 気付けば俺は涙を流し、味噌汁を落としそうになっていた。ゆっくりとテーブルの上に味噌汁を置いて、袖で涙を拭う。大の大人が、これでは情けない。


 彼女も、辛さから早く解放されたら良い。


 俺はそう願って、また味噌汁に口をつけた。

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