夢
辛いことがあった日。涙を流した日は、必ず好きな人が夢に出てきた。夢に出てきて、私の話を聞いて、辛かったねと相槌をうってくれる。
それは私の心に幸せをもたらし、心を満たし、辛いことがあっても翌日には元気になれた。夢の中であろうと、話を聞いてもらえるのは辛いのも軽くなるというものだった。
だから私は見なくなった。
現実を。言葉を。周りの人を。
辛いことがあっても、夢の中で慰めてもらえる。周りの人が心配してくれた言葉は、全て要らないものとして、いつの間にか扱っていた。
結果は勿論、良くはない。気付けば仲の良い友達は、別の人と楽しそうに会話をしている。気付けば私の好きな人は、知らない女子の隣を歩いている。
最低で最悪で、自分がしていることに気付かなければならなかった。
気付くことはできた。でも、私には不必要だった。
どこにでも付いてくる女子友達も。話なんて聞いてくれない、現実の好きな人も。誰もいらなかった。一時の迷いとは言えるが、それでも、夢の中で話を聞いてくれる好きな人だけで十分だった。
だけど私が独りになったとき、夢の中に好きな人は出てこなくなった。
好きな人が夢に出てくるのは、あくまで現実もしっかり充実させていることが前提としています。
だから現実で充実せず、夢の中の好きな人に執着していた「私」の夢には、もう出てこなくなった、という話になっています。
ちなみに現実の好きな人と、夢に出てくる好きな人は同一人物です。
性格が現実と夢で違う、ということになっています。




