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パレットの上で
それは、快晴の空。
それは、燃え上がる炎。
それは、天に広がる木の葉。
それは、甘くて美味しいチョコレート。
それは、夜空に輝く星々。
それは、何も見えない闇の中。
丘の上に投げ出された、パレット。長年使われ、うっすらといろいろな色が染み込んでいるパレット。小分けの部屋に、色鮮やかな絵の具が少量ずつ出されている。
水で濡らされただけの筆は、パレットから数メートル離れたところに転がっていた。色に混ぜられる前に、投げ出されたようだった。
まるでその筆のように転がっている"遺体"は、光の無い瞳で虚空を見つめていた。筆に手を伸ばしている途中で力尽きたのか、力尽きて筆を手放したのか。
力尽きた理由さえも知ることはない。何故、遺体になってしまったのか。
だがその遺体は、うっすらと口角が上がっていた。パレットの上でその遺体は、幸せそうだったのだ。




