連絡先
バイト先の、大学生の女の子が辞めた。その理由は店長曰く、もうすぐ大学卒業だから実家に帰るらしい。
少し、寂しいと感じた。別段その女の子と仲良かったわけでは……ない。休憩が重なれば一緒に買い物をしてみたりしたけれど、プライベートで話したことはない。会えたこともない。
その程度の関わりだった。だけどその女の子と話すのは面白く、シフトが重なるのは結構楽しみにしていた。私にとっては、それなりに大きな存在で、仕事が楽しい理由になっていた。
「辞めちゃったのかぁ……」
仕事の帰り道。白い溜息を夜空に溶かして、ポケットに手を入れる。大学の卒業が近いことは聞いていたけど、いざいなくなってしまうと気持ちはかなり違う。
たった仕事内だけの関係。互いに連絡先を知らないから、連絡して会うなんてことはできない。
せめて連絡先くらい交換してても良かったかなぁ、と思ったところで、もう遅い。自分の勇気の無さ、意思の弱さに腹が立ってくる。
卒業近いって聞いた時点で、せめて連絡先の交換を求めていれば……。
「あーあ……明日から仕事頑張れないよ……」
「なんでですか?」
背後から突如聞こえた声。がっくり落とした肩を、ぽんと叩かれ、つい体が跳ねる。勢いよく振り向くとそこには。
連絡先が知りたくて堪らない相手が立っていた。
裏設定で、女の子は必要な書類などを置いたり受け取ったりするために、再び店にきたことになってます。店に行く途中で、主人公とまた出会いました。




