表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日めくりカレンダー  作者: 流美
1月の日めくりカレンダー
3/294

花咲病

 私の友達に、春華という名の華奢な女の子がいる。その女の子はつい先月、未知の病にかかってしまった。花咲病(はなさきびょう)と仮に名付けられた、その病は、体から花が咲いてしまう異質なものだった。

 春華は学校を休み、1日のほとんどを寝て過ごしていると、春華のお母さんから聞いた。花咲病は頻繁に睡魔に襲われ、そして寝ている間にどんどんと病は進行していくらしい。


「春華、体調大丈夫なの?」

「うん……たまに吐き気がするくらい、かな……」

「そっか。吐き気がしたらすぐ言ってね」


 力無い笑顔を浮かべ、弱々しくお礼を言ってくれる春華。症状がだいぶ進行しているせいか、最後に会った時よりも顔色が悪い。

 未知の病というのは、言い換えれば不治の病。……と春華が言っていた。春華は既に覚悟を決めているようで、私はそんな春華が少し嫌だった。なんだか、寂しくて。


「この花……可愛らしくて綺麗でしょ……?」

「うん。小さいのが可愛いし、沢山咲いてるから一層綺麗だね!」

「……ふふ、ありがとう」


 顔色は悪いけど、にっこりと笑った春華を見て、少しだけ安心する。春華が優しく笑ってくれる姿は、病にかかる前と同じで。私の好きな春華の姿。

 でもそれは表情だけ。春華の指先や太腿、おでこからは白い花が細かく咲き乱れている。春華に似合い、素敵で確かに綺麗なのだが……この花のせいで春華が死んでしまうことを考えたら、似合うなんて思っていられない。


「明日も学校あるでしょ……? 帰らなくて大丈夫……?」

「あっ……もう19時か。こんな時間までごめんね、帰るね!」

「……うん」


 学校終わりにお見舞いに来て、長居をしてしまった。そろそろ私の家も夕ご飯の時間だし、早く帰らないとご飯抜きになってしまう。

 鞄を背負って春華に別れを告げ、部屋を出ようとしたところで、急に呼び止められる。


「どうしたの?」


 振り向くと目に映ったのは、今にも泣きそうな笑顔を浮かべる春華。伸ばされた手の平には、春華に咲いている花が1個乗っていた。


「この花、あげる……」

「えっ……これ、千切ったの……?」

「……この花の名前、なんて言うか知ってる……?」

「知らないなぁ、ごめん……!」


 それ以上、春華は何も言葉にしなかった。なんだか申し訳無さを感じたけれど、好意を無下にすることはできない。そっと1個の花を手に取り、再度別れを告げる。


――リナリア


 部屋のドアを閉めた瞬間、そんな言葉が聞こえたような気がした。聞き間違いかもしれないし、これ以上の負担を春華にかけられない。

 私は大人しく、ゆっくりと帰路についた。

多分調べるの面倒だと思うのでここでネタバレを。



リナリア(姫金魚草)

花言葉:この恋に気付いて・私の恋を知って



多少意味合いが違う場合もありますが、この話ではこの意味なんだな、と寛大な心をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ