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記憶喪失
こちら7日の分です
夢のように消えていった。
幻のように散っていった。
それは、貴方のこと。私のこと。家族のこと。
全て無くなってしまった。分からなくなってしまった。こんな筈じゃなかったと。こんなことあるわけがないと。
みんなに言われ、私もそうだねと言い。でも本当に何も、分からなくなっていて。
「一緒にここ、来たよな」
「…………そうなの」
「やっぱり、覚えてないか」
「ごめんなさい」
ただ、寂しそうに微笑む貴方に、どうしようもなく胸が締め付けられる。苦しくて、痛くて、辛くなる。
「思い出すまでも、思い出しても、一緒にいよう」
そんな中で貴方の言葉が、優しく、じんわりと心を温めた。




