231/294
傷付く顔
君の傷付く顔が好きだ。何かを察し、何かに気付き、何かで絶望する。ころころ変わる君のその表情が、堪らなく大好きだ。
そんな顔を、他の奴に見せるわけにはいかなかった。その顔を知っているのは、俺だけで良かった。他の誰にも知られたくない。
だから独り占めした。暗い部屋の中に閉じ込めて、誰の視線も浴びないようにした。ドアを開けると、腫らした目で懇願してくる君が、可愛くて殺してしまいそうだった。
そしてその内、ドアを開けなくなった。君の白い首筋に伸びる手を、いよいよ抑えきれなくなったからだ。
君の傷付く顔が好きだ。だけど君のきっと美しい死に顔は、もっとずっと好きになる。




