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花火
季節外れの花火をした。最愛な人と隣に並んで、静かな花火をした。
打ち上げ花火だとか、色が変わる噴き出し花火だとか、そんな大それたものはしていない。丸く淡い光が暗闇に灯ってから、その命が尽きるまでをじっと見守る、あの花火。
夏にやろうと思った花火だ。結果、できていなくて今に至る。夏にやっておけば良かったと、心から思う。
もう、今更そんなことを思っても遅いけど。今年の夏、最愛の人の命も、尽きてしまった。
隣にいるのは、私と一緒にいた頃の写真。まさか離れる日が来るなんて、一切疑わなかった笑顔だった。
ぽとりと落ちた灯火に、虚しさを感じる。あの人もこうやって、呆気なく逝ってしまった。私は慌てて、次の花火に火を付けた。
最愛の人とできなかった花火は、あまりにも寂しい。隣にもうひとつ、灯りがほしかった。




