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日めくりカレンダー  作者: 流美
9月の日めくりカレンダー
192/294

欲しかったもの

 たったひとつだけ、僕らには欲しい物があった。それは地位でも名誉でも、富でも無い。どうしようもなく欲しいもので、でも二度と手に入らないもの。



 僕らが出会ったのは、緑の多い公園だった。滑り台の下で座り込んでいた僕に、彼女は声をかけてくれた。


 噴水で水遊びや、ブランコ、シーソーなど。彼女に手を引かれて僕は、世界に色を見つけた。

 何もかもつまらなかったこの世界が、何もかも楽しく思えて、輝いていた。彼女のお陰だった。


 だけど僕らに足りないもの。僕らが1番に望み、どうしても手に入らないもの。

 それが、僕らの“実体”。


 僕は3年前。彼女は5年前に失った。お互いに、交通事故だ。

 幽霊同士だからこそ仲良くできた。会話もできた。しかし幽霊同士だからこそ、これ以上の関係にはなれない。否、なることは許されない。


 僕らは“実体”を求めた。生前と同じ実体を、彼女と触れ合う為に。だが無論、手に入る筈もない。



 それでも僕らは、幸せだった。

こちらの作品は部活動で使用する可能性があります。

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