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貪欲
人が1番快楽だと感じるのは何か、知っているか。ある人が言うには、それは死ぬ直前なんだそうだ。
首を吊って意識を失う時。屋上から落ちて地面にぶつかる時。線路に入って電車を目にした時。
どうやらその時が、一生のうちで1番の快楽を得られると。たった一瞬のことだがな。
皮肉なもんだよ。どれだけ生きようともがいてたって、結局死ぬときが1番幸せってことだろう。信じられるか?
だから俺は、その快楽を何度も貪れる力が欲しい。その力さえあれば、俺は何度も何度も死んでやる。
死ぬ事に対する恐怖なんて微塵も無い。元々、人生なんていつ辞めたって良かった。けれど、辞めようとして幸せを得られるなんてことが本当にあるのなら、俺はいくらでも幸せを得たい。
知ってるか。俺みたいな奴を貪欲と言ってな、結局何も手にすることなく無様に死ぬんだ。




