雪のパレット
真っ白でザラザラしている。そんな雪の上に、目一杯絵を描いてやろう。私は水鉄砲を持ち出した。
バケツをいくつも用意して、水を入れる。それから絵の具をそれぞれに混ぜて、カラフルな色水を沢山作った。
お察しの通り。水鉄砲に色水を入れる。手始めに青色から。
空よりももっと深い青。海よりももっと透き通った青。私は勇気を出して、引き金を思い切り引いた。
びゅっと弧を描き、飛び出た青の色。私の立っている位置から前一直線に、線が引かれた。
胸がざわっと熱くなって、口がムズムズする。頭がいっぱいになって、手に力が込められた。これ、楽しい。
あっちこっち無差別に、残りの青色を飛ばしていく。水鉄砲が空になったら、一旦水で洗って、また別の色を入れる。次は赤色。
思わず「凄い」と声が出てしまった。最後に出来上がったのは、めちゃくちゃな、ピカソもびっくりのヘンテコな芸術。
でも謎の達成感があって。胸がずっとドキドキしたままで。こんなに楽しいことが、この世の中に存在したんだよって、全世界の人に広めたくなってしまうような。
私だけの、雪のパレット。明日には消えているだろう。そんな悲しくて寂しいパレット。
だからこそ、私はこの作品を目に焼き付けた。私が全身で描きました。証拠に私のサインも、黄色で書いちゃって。
写真は撮らずに、背を向けた。
雪が降ったらやりたいですね




