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日めくりカレンダー  作者: 流美
9月の日めくりカレンダー
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最期まで隣で

「嘘ばっかし」


 そう言って、笑ってみせた。白い部屋の白いベッドに座っている彼は、得体の知れないくちゃくちゃの顔をしている。

 嫌いになったから別れよう。彼はそう言った。さようなら、とも続けた。この人は馬鹿で、でもそこが愛おしくてたまらなかった。


「あのね、隠さなくていいんだよ。君に残された時間は、あとどのくらいなの?」


 彼は堪えていた涙を、一気に流した。悔しくて悔しくて、堪らないといった様子で、拳を握りしめている。

 私は彼の横に座って、何もない天井を見つめて、それから彼の手を包み込んだ。ぎこちなく、彼が指を絡めてくる。


「俺、あと、半年生きていられるか、いられないかだって」


 子どものように泣きじゃくっている。どんな思いで胸がいっぱいになっているのか、私には知る由もないけれど。きっとそれは、私の想像を遥かに超える、大きくて複雑な思い。


「ねぇ、私のこと好き?」

「……好きだよ。大好き」

「じゃあ、別れる必要なんてないよね。最期まで……隣にいさせて」


 迷子になった子どものように、不安げに頷いた。もしも私が寿命を延ばせたり、彼の病気を私に移すことができたのなら、彼はこんな思いしなくて済むのに。


 泣いている彼を優しく抱き締めた。その私の何倍もの力で、彼は抱き締め返してきた。


「私、ずっと君が大好きだよ」


 胸の中でまた、不安げに頷く彼。半年も経てば、この温もりが無くなってしまうのかと考えたら、胸がヒヤッとした。


 だから彼に負けないように、ぎゅっと力を込める。ここから、消えてしまいませんようにと。

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