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愛想笑い
いつも、曖昧に笑って誤魔化していた。適当に相槌を打って、なんとなく会話していた。
楽しそうに笑う、あの子が羨ましかった。
どうしたらあんなに思い切り笑えるんだろう。全然つまらなそうなあの会話で、なんでそこまで楽しめるんだろう。
あの子と自分の世界が違うことは、薄々勘付いていた。
あの子はビルの屋上でパーティをしている。私は下から見上げて、帰るだけ。格が違った。
誰に対しても何に対しても、楽しそうに声を上げていた。それなのに彼女は、パーティ会場から私のところへ飛び降りた。
意識よ戻れと願う暇も無く、あの子は即死だった。私は今更ながら、あの子は愛想笑いが上手い子だったのだと知ることになった。




