終わらない夏休み
蝉が鳴くのをやめた秋の始まり。かき氷が溶けてしまう猛暑は未だに続いている。現在時刻は、みんなが必死で宿題に取り組んでいる午後11時半を過ぎたところ。
世の学生が、絶望を胸に眠る今日。
1ヶ月と少し夏休みを終え、朝を迎えたら学校に行かねばならない、今日。
私は、百均で買った長い紐を手にしていた。音を立てないように、ドアノブに紐を括り付ける。ネットで探した、紐で作る輪を何回か間違えながら成功させた。
みんなが学校に向けて宿題をやって。みんなが学校に向けて嫌な顔をして。そんな中で私は、バラバラにした宿題を机の上に残して、ほくそ笑む。
学校に行かなくていいんだ。そう思えることが、ここまで私に解放感を与えてくれるなんて思ってもなかった。
――夏休みが明けたら、虐めなんて収まってるわよ。そんなこと気にしてないで、宿題でもやったら。
お母さんが言ったこの言葉。お母さんには、私の気持ちなんて分からないんだろうなぁと思いながら聞いていた。
虐めって、夏休み挟んだからって無くなるものなんかじゃないんだよ。お母さん。
紐で出来た輪の中に頭を入れた。ゆっくりと足を伸ばして、首に紐をくい込ませる。
意識がぼーっとして、腕に力が入らなくなってきた。笑顔が可愛かった親友の、見下した表情が脳裏に浮かんだ。最後に親友が笑ってくれたのは、いつだった……かな…………――
私の夏休みは、永遠に終わらない。
私は小学生の時から、宿題は「忘れました」か、前日徹夜でした。




