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日差し
クイと袖を引っ張った。
晴天の空の下、半袖の君。ワンピースを見に纏う私と、君の袖を掴む焦げた手先。
彼と私は、友達以上、恋人未満の関係。かれこれ、3年。私の片想いはずっと。彼の片想いもずっと。彼の相手は、私じゃないけど。
「どうした」
ふいと振り向いた彼。きょとんと目を丸くした表情と、振り払わない私の手。
いつか彼と私は、恋人以上になれたらいいなと思い続けてた。かれこれ、3年。私の願いはずっと。彼の願いもずっと。お互いに、違う願い。
「私だけ、見てよ」
ぽろと溢れた言葉。その先に続かない否定と、汗ばむ私の背中。
きっと日差しに照らされて、汗が噴き出たに違いない。きっと日差しに照らされて、頭がおかしくなったに違いない。彼は私の手先を、そっと落とした。
彼は無言だった。
きっと日差しに照らされて、私の言葉は聞こえなかったに違いない。




