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あの頃
「やぁ、我が弟よ。久しぶりだな」
「お兄ちゃん! ねぇ遊ぼう!」
「勿論構わないぞ。今まで遊べなかった分、たくさん遊ぼうか」
「お兄ちゃんに会えなくて、僕、寂しかったんだよ!」
「寂しい思いさせてごめんな。これからはちゃんと側にいるからな」
「へへ、やったー! お兄ちゃんだーいすき!」
「俺も、大好きだよ」
幸せそうな兄弟は、白い箱の中。巨大な天使の羽を背負った兄と、小ぶりの天使の羽を背負った弟。
弟の羽に気付いた兄はなにも言わない。弟と出会った時点で、それは知っていたから。
兄の羽に気付いた弟はなにも言わない。兄が側にいてくれるだけで、弟は幸せだったから。
2人はあの頃のように、ただ無邪気に遊ぶ。




