いないよ?
なーんもいないよ。なーんもないよ。
君が見えている物全て。君が話している人全員。全部嘘だよ。形なんてないよ。
よく考えて。君がこれまで過ごしてきた毎日って、本当に君が過ごしてきたのかな?
本当に君は、今まで君として存在していて、生まれてからずっと君のまま、君は過ごしてきたのかな?
ねぇ、それっておかしいと思わない?
生まれたときの君と、小学生になった君と、高校の勉強をした君と、成人をした君と、仕事を頑張る君と。
それって本当にみんな、君なのかな。
君は本当は何人もいて、いつのまにか同じ時を何度も繰り返していて、でも君の記憶と体はバラバラだから、わからない。
記憶だけが前に前にって進んでるけど、本当の君はずっと同じ時を繰り返している。ずっと同じ世界の中に取り残されているんだ。
もしかしたら、その記憶だって、本当の君じゃないかもしれないよ。
君だったら気付けるかい?
生まれた時の君はAとしよう。仮に君がちゃんと、Aとして過ごしていたとしてある日。君の記憶はまるまる全部、何処かの誰かのBと取り替えられてしまった!
気付けないよね。Bになった君は、生まれたときのことも、誰かと知り合ったことも、なにもかもAではない。Bのもの。
それは本当の君ではない。だけどそんなこと実際にあったって、誰も気付けない。自分だって勿論ね。
だから君に問いてるんだよ。本当に君は、今まで君として存在していたのか?
君は、いないんだよ。この世界に、実体がない。君だけに限らないけどね。君の親も、君の友達も、君の親友も、君の先生も。
みんな形なんてないよ。いつのまにか何処かの誰かの全然知らない人になってるかもしれない。
でも君は気付けないんだよ。それがこの世界であるために必要なことだから。気付いてしまえば、この世界は壊れてしまう。
改めて言うよ。君は、いない。
この世界に、君はいないんだよ。




