男女の友情
「でさ……どう思う……?」
「――まぁ、いいんじゃね」
オレンジ色の光が射し込む、放課後の教室。隅っこで話す俺らの他に、クラスメイトが数人いる。俺らの会話を搔き消すような声量で、彼等は話していた。
「おっけーしちゃったのに、今更ごめんなんて言えないしなぁ……」
「しばらくしても駄目だったら、別れたら良いだろ」
そんな俺らは、恋話をしている。というか……恋愛相談? 美鈴が先日、仲の良い異性に告白されたらしい。
だけどそんな美鈴には好きな人がいた。それなのに、その異性の告白を受け取ってしまったようで。付き合うことになってしまって焦っている相談だ。
普通、恋愛相談って同性同士でやるものではないのか。疑問に思いつつも、心の片隅では腹立たしさを感じていた。
「そっかぁ……わかった、暫く付き合ってみるよ」
「おう。応援しとく」
こんな相談をされる身にもなってほしい。俺だって……俺だって、美鈴が好きだったのに。
好きな人がいるにも関わらず、仲が良いだけのどっかの異性に美鈴が盗られてしまった。ただ告白されただけで。
美鈴が好きな人と付き合うだけならまだ良い。まだ、諦めがついた。だけどこれじゃ、諦めをつけようにもつけられない。
だったら俺が告白してたら、付き合ってくれてたのかと。
俺が一足早く、美鈴の好きな人なんて知らないふりして告白してたら良かったのかと。
「ありがとね、亮太! 相談乗ってくれて!」
「……別に。いつものことだろ」
「あはは、そーかもっ」
屈強の無い笑顔。俺のことはきっと、ただの友達で、自信をもって言っても、ただの親友か。それ以下に変わる日は来ても、それ以上に変わる日は来ない。
これを、男女の友情と言うのだろう。
(好きだったよ、美鈴)
「さ、帰ろ! 暗くなっちゃう!」
彼氏として、美鈴の隣を歩く権利が欲しかった。




