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指人形
「見て、指人形みたいになっちゃった!」
指先に巻いた包帯を俺に見せて、菜月が笑った。不器用な菜月が、自分で頑張って包帯を巻いた結果だ。指先は丸い筈なのに、包帯の形は四角くなっている。
「下手くそ」
「不器用なりに頑張ったんだよーっ! 褒めなさい!」
「はいはい、えらいえらい」
座っていたクッションを押し退けて、俺の方に身を預けてきた。棒読みで褒めつつ、思い切り抱きしめてやる。答えるように菜月も、俺の背中に回した腕に力を込めた。
ころころと、犬みたいな菜月。付き合ってもうすぐ1年。菜月に対する愛おしさは、まだまだ上昇しそうな勢いだ。
「はい、じゃあこれ!」
「ん。俺からはこれな」
黒くて分厚い布の袋をお互いに交換する。大きさは10センチくらい。中には柔らかい物体が入れてある。
「これでどこにいても一緒だね!」
「そうだな。まぁこんなことしなくても、離さないけどな」
俺の指先にも巻かれた包帯。少し薄汚れていた。なるべくこまめに交換しないといけない。
「大好きだよっ」
「あぁ、俺も」
俺の指が、菜月の男避けになりますように……と。




