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ミミズ
「ずっと仲良くしようね!」
うん、と答えた瞬間に胸がずきんと痛んだ。苦しく締め付けられる胸元を何気なく押さえて、目の前で笑う友人と一緒に笑った。
どくん、の心拍の代わりに、ずきん、と胸が音を鳴らす。バレてはいけない嘘。何も知らずに信じている友人が、なによりも愛おしくて、辛い。
その友人は無邪気に笑う。1ミリの曇りもない瞳で、闇に包まれている私を見つめていた。闇を必死に隠して、泣きながら笑う私とは正反対で――綺麗だ。
ごめん。友人に対する謝罪も、両親に対する謝罪も、手紙の中に置いてきた。私の口からは、ありがとうだけ。バレないように、さりげなく会話に含ませる。決して前兆だったなど、思わせることがないように。
友人と別れてから歩く帰路は、あまりにも寂しくて重くて湿った空気が纏わりつく。私が見る最期の空は、青の欠片も見えなかった。
ぼんやりと滲む太陽が、まるで友人みたいだと他人事のように思った。私にとって友人は、眩しすぎて勿体ない。友人が太陽なら、私はきっと太陽に焼かれるミミズだから。
私の代わりに、お月様が笑ってくれますように。




