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言葉を食べる悪魔
僕は悪魔に出会った。その悪魔は、言葉を食べて生存しているのだという。そして僕はその悪魔に、言葉を食べられてしまった。
――好き
思うことはできても、書くことも口にすることもできない。しようとすると、途端に何もわからなくなる。平仮名も漢字も、たった2文字なのに書けなくなるし、話し方も分からなくなった。
困ったものである。大好きな君に、好きの一言も伝えることができなくなったのだから。ありがとうも、ごめんねも言えるのに、伝えたい言葉を食べられてしまった。
だけど僕は、代わりの言葉に気付いた。
「愛してるよ」
好きを凝縮して、君に伝えます。嫌われ者の悪魔に、感謝をしなくてはね。




