パズルのピース
僕という存在はまるでパズルのように、何かひとつでも欠けてしまえば僕ではない。大袈裟に言えば、よく笑う人から笑顔をとってしまったらそれはその人ではない。それと同じ。
人間とは、パズルだ。
生まれた瞬間からパズルのピースを集め始めて、長い年月をかけて組み立てる。ようやく出来上がったと思えばすぐに崩れてしまって、そうしたら新しいピースを作ったり、また探したり。
僕はパズルのピースを失くしてしまった。
もう二度と戻らないピースだ。欠けてしまったその部分が埋まることはない。このまま一生、僕は未完成として生きていく。
けしてそれに後悔はない。だから新しく探そうと思わない。欠けたままでいい。欠けたそこには何もないけれど、僕には分かるのだ。その部分に、ピースがはまっていることを。
人間とは、パズルだ。だからといって、正しいピースだけを求めようとしなくても良い。これは欠けたピースが、教えてくれたこと。間違ったピースの組み立て方を悩んで、気付いて、どこに置いていくか。それが重要らしい。
僕はパズルのピースを失くしてしまったけれど、それが間違いだとは思わない。代わりのピースを探すつもりはないけれど、そのピースは僕に大切なことを教えてくれた。
そしてそのピースは最期にこう言ったのだ。
「会いにくるから」と。
代わりのもので埋めるわけにはいかない。欠けたピースのこの部分は、いつか訪れる新しいピースのために空けておくんだ。




