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もう、遅い。
俺の大好きな彼女が、自殺した。
辛いとき、苦しいとき、隣にさり気なくいてくれた。「大丈夫、貴方なら大丈夫」っていつも言って、安心させてくれた。ありがとうと、俺はいつも返せていただろうか。
あの日俺が「もう少しだけ一緒にいよう」と声をかけていたら。彼女の手を掴んで、無理やりにでも抱きしめていたら。
何かは、変わっていたのだろうか。彼女は俺に、涙を見せてくれたのだろうか。
彼女は俺に「助けて」とは言わなかった。常に笑って、俺の隣にいてくれた。彼女も人間だ。悩みも愚痴も、いろいろあったんだろう。
俺がちゃんと、そんな彼女に気付けてあげていたら。
「お前の隣に、俺は居ることができたのか……?」
答えは彼女しか、知らなかった。




