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日めくりカレンダー  作者: 流美
4月の日めくりカレンダー
102/294

ねぇママ。

 ねぇママ。僕の声聞こえる?

 ねぇママ。僕の姿見えてる?

 ねぇママ。どうして僕を産んだの?


 ねぇ……ママ。



「寒いよ、ママ……」


 黄色くて明るい、まんまるなお月様が、真っ暗なお空に浮かんでる。今日は風が強くて、ママの代わりに僕を殴ってくる。

 窓の向こうから聞こえるママの笑い声。カーテンが閉められてて見えない。また知らない男の人と遊んでるのかな。


 いつもは手が痛くなるまで窓を叩いてるけど、最近はあまりやってない。それをするとママは、とっても怒る。殺されそうなくらいに、ママは怒る。

 だからやめた。僕が我慢すればママは怒らないってわかった。それでもたまに怒らせちゃうけど、前よりはずっと怒らなくなった。


 夜になると僕のことをベランダに出すママ。太陽が昇ってきたくらいで入れてくれるのは機嫌が良い日。機嫌が悪い日は、太陽が昇って、また沈む頃までベランダにいるしかない。

 一回、逃げちゃおうかなって考えた。二階建てだから、下を見たら逃げられそうって思った。でも、いざ逃げようとしたらタイミング悪くママに見られちゃって、死ぬよって言われた。僕は死ぬのは嫌だったから、大人しくママに殴られた。


 やめてって叫んでも、助けてって叫んでも、ごめんなさいって叫んでも、ママは聞いてくれないの。無視する。いろんなことを怒鳴りながら、ママは僕のことを殴る。

 僕が何を言っても聞いてくれないことばかり。僕のことが見えてないみたい。いらない子みたい。だってすぐに僕のこと、ベランダに追い出すし。


 ねぇママ。死ぬって、どんなこと?

 ねぇママ。それって、温かい場所で眠れること?

 ねぇママ。それとも、ママともう会わないってこと?


 あのね、ママ。


 僕、死にたくないよ。ママといっぱいお話しして、いっぱいぎゅーしたいよ。あったかいご飯食べてね、あったかいお布団で一緒に寝てね、僕、ママとしたいこといっぱいだよ。

 だけど、ママ。一回、死ぬってこと、僕体験したいんだ。ママのところが1番なんだって確認したいんだ。ママは本当は僕のこと、好きでいてくれるって思いたいんだ。


 だからばいばいしてみるね、ママ……――

本当はホラーの予定でした

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