04
「―――距離は150フィート。マガジンには九発。初弾が一発充填されてる。あの的、狙ってみな。」
あたしはおっさんの後を追い、地下の演習場に来ていた。
「・・・なぁ、なんで今更・・・。」
「―――いいから。よーく狙えよー?狙うはど真ん中のみだ。」
「―――ちっ!」
こうなったら―――意地でも全弾命中させて吠え面かかせてやる!!
ズドーーーーンッ!
まずは一発目。トリガーを引くと、小気味良い銃声と共に、弾丸は見事、的に命中。ど真ん中からは右に数センチずれたが、バランサーの未調整って部分も含めると、まずまずの出来だ。
続いて、二発目。今度はど真ん中に命中!うしっ!
あたしはおっさんを横目で見ると、ふふんと鼻を鳴らしてやった。おっさんは的を見据えたままピクリともしない。
そして三発目、四発目と続いて命中。それぞれ若干左にずれたが、ほんの数ミリってとこだろう。そのまま、十発目まで全て、真ん中の円内に収まった。
「―――どうよっ!?」
あたしは自信たっぷりにおっさんに言い放つ。
「―――ふむ。まぁまぁってとこか。」
はぁ!?初めて使う拳銃で、射程距離ぎりぎりの上、しかも弾道が逸れやすい9mmだぞ!?まぁまぁって―――
「―――貸してみ。」
「―――あ、おい―――」
おっさんはあたしから拳銃を取り上げると、マガジンを外し、懐から新しいマガジンを充填する。そして、スライドを引くとそのまま片手で―――
ズドンッズドンッズドッ―――
―――ワンハンド連射っ!?しかも、反動をものともせず―――あっという間に、九発全てを打ち終わった。
「―――どうだ?」
的に向かって放たれた弾薬は、一発目のみが赤い円のど真ん中に穴を空けた。―――他に、的に空いた穴はない。―――穴が、ない!?
「・・・。」
・・・マジかよ・・・。つまり、おっさんは、九発全てを、寸分の狂いもなく、ど真ん中に命中させたってことだ。・・・に、人間技じゃ、ねぇ・・・。
「―――いくら9mmでもな。同じ傷に何発もぶち込みゃ、マグナム以上の破壊力になる。―――嬢ちゃん、武器ってのはな。使い手次第なんだ。武器の性能に頼ってちゃあ、いざって時にゃ使い物にならなくなる。使いようによっちゃ、小石だって立派な武器になんだぜ?」
「・・・っ!」
おっさんは、あたしの目を見て、ただ、そう告げる。
「ちなみに、俺の部下たちは一人残らずこの程度の芸当はできる。どうだ?根を上げて国に帰ぇるか?」
・・・9mm拳銃の有効射程はせいぜい165フィート、つまり50メートルが限界ってとこだ。もちろん、距離が長くなればなるほど、精密な射撃は困難になる。ぶっちゃけ、そこいらの兵隊レベルなら的に当てるのがやっとって距離だ。・・・それを、易々と、しかもワンハンドの連射で・・・!
「―――ちくしょうっ!この演習場、しばらく借りていいかっ!?こうなったら、あたしだって意地でも―――」
「あぁ、いいぞー。あ、予備の弾丸はそこのケースにあるからな。頑張れよー。」
―――ちくしょー!絶対やれるようになってみせるさっ!こんな芸当出来ないで、あのバケモンぶっ殺せねぇからな!
その後、非番なのを忘れて、晩飯までずっと射撃訓練を続けたあたしであった・・・。