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第一話
病院。
気がつくと、また例の違和感があった。
多分、改造されたのだろう。脳か、身体か…。
僕は僕だ。でも、ホントに僕なんて、もう、存在するんだろうか?
記憶。思考や感情の動き方。すべてに手が加えられている。
僕は僕ではあるが、もはや僕など、どこにも存在しない…。
そんなブルーな気分で、廊下の窓の外の雨を眺めていると、看護師が僕を呼び止めた。
「こんど、ヨシキさんの隣の病室に入る方です」
カワイイ女の子だった。
「こんにちわ」
明るい表情で、彼女が言った。
はあ。仲良くなりたいな…。
彼女の病室を眺めると、女の子は窓の外を眺めていた。
「こんにちわ」
僕は彼女に声をかけた。
二人で廊下を歩く。
「私、脳をいじられてるんだ」
「僕もだよ」
「いつまで憶えていられるんだろう?こうやって、あなたと歩いたの…」
「僕はケン」
「私、カナ」
「憶えていられる限り、楽しくやろう」
「…うん」
僕らは手をつないだ。