決闘!?
「だから、決闘しなさいと言ってるのよ!」
保健室で目覚めて、怪我も治っていたから安心していたが、どうやら俺は面倒ごとに巻き込まれやすいようだ。
レイピアを構えたウラリスは俺の首を貫かんばかりの怒りが伝わってくる。生唾を飲み込むしかなかった。
エミリアとの決闘を邪魔されただけでなく、死にかけたのだ。俺に食ってかかるのも無理はない。
ただ、あの時は俺も必死だった。ヴリトラとの戦いで大怪我を負い、墜落してもおかしくはなかった。着役の際は目の前のことで精一杯で、そこに人がいたのは知らなかった。
でも、俺に当たるのはおかしいと思う。なんなら、ヴリトラの野郎に当たってほしい。
決闘と言われても、ここは異世界。ヤンキーが殴り合うような喧嘩ではない。それがましてや、平和大国日本だ。決闘なんて法律で禁止されている。個人的にも喧嘩はしない派だ。
江戸時代じゃ、あるまいし。
竜騎士の決闘と言ったら、竜同士のぶつかり合いが想像できる。俺は、竜騎士と思われてるらしい。戦闘機を竜と勘違いしているのをなんとかして説明しなければ。
「まて、ウラリス。」
どうしようかなと、考えていると。エミリアが割り込んできた。
「なんですの、エミリア!?私たちの神聖な勝負を汚されただけでなく、私は死にかけたのですよ?本来なら、即刻死刑ですわ!」
キラン!
レイピアが鋭く光る。いつでも、貴殿の首を刺す事ができるということだろう。
「お前も知っている通り、こいつのドラゴンはもう死んだんだ。しかも、あんだけ、怪我をしていたんだ。無理をすると、傷口が開く可能性がある。」
ああ、エミリアが天使に見えてきた。見ず知らずの男を助けただけでなく、決闘も仲裁してくれるとは。
「でしたら、不戦勝で貴方の負けというわけでよろしくて?」
「そ、それは……」
エミリアが俺の方をチラチラと見てくる。何か問題でもあるのか?
すると、レインカが耳元で説明する。
「竜騎士にとって敗北、棄権は最大の屈辱でもあるの。敗北者の殆どは自害するほかないのよ。」
成る程。まるで武士みたいに誇りが高いのか。しかし、腹を切るのはごめんだ。
「この状態だと、貴方の汚名は末代まで語られるでしょうね。エミリアはああ言う、性格だけど、とても優しいのよ。」
俺のためを持って、必死に説得しているということか。なんだか、エミリアが眩しく見える。聖女ってこういう人に与えるべきだな。
「でしたら、エミリアが変わりというのはどうでしょう?」
「わ、私がこいつの代わりをやるというのか!?」
「丁度、貴方との決闘がまだですわ。この際、決着をつけましょう。」
俺に向けられていたレイピアがエミリアの方へと向けられる。その様子にレインカも「まためんどくさくなったわね〜。」と頭を抱えていた。
「いいだろう。」
エミリアは戸惑いつつも、自らの刀を抜刀した。
「「我、血の盟約に従い、汝を滅せん!」」
互いの武器が交差し、触れ合う。どうやら、両者とも決闘を承諾したようだ。
そして、互いに武器をしまう。
「では、放課後。グラウンドで待っている。」
「右に同じく。」
ウラリスが振り返り、保健室から出て行く。
それを見た、エミリアは……
「ということになりました。先生、審判をお願いします。」
エミリアはレインカに頭をさげる。
「もー、本当は生徒同士の決闘は禁止されてるはずなのよ?」
「存じております。ですが、私はカリアス王国の姫。決闘を断れば、我が王家に不名誉となってしまいます。」
それを聞いた俺は、「ぇえ!?」と驚いてしまった。
「どうした?」
「お、王女だったんですか……」
「ああ、確かにそうだ。だが、この学園では身分は関係ないことになっている。書類上はな。」
俺って、やたら大物と出会い率がたかいな。皇女の次は王女ときたか。身分でいうと、ウラリスの方がたかい。帝王と国王は一緒だと、思うが実際は皇帝が一番偉いのだ。
ちなみに、日本の天皇も英語でエンペラー。つまり、皇帝陛下というわけだ。あの、ローマ法王やエリザベス女王よりも身分が上らしい。
あったことはないが、映像からでも不思議なパワーを感じる。昭和天皇が現人神って言われた理由がよくわかる。
「ま、私もあいつとは、決着をつけたいと思っていたところだ。」
完全に捻りつぶす!と言わんばかりのやる気が伝わってきた。
一応、俺は助かったでいいのか。
「ま、私の戦いをよく見ておけ。……ハヤテ。」
そう言い、保健室を出て行く。
あれ?俺まだ、名乗ったつもりがないはずだが……ま、いいか。
怪我が治ったとはいえ、まだだるい。決闘の時間まで寝ることにした。
「はぁ、色々と準備しないと……」
2人の決闘を承諾したレインカは書類をまとめていた。