ここはどこ?
「……あれ?ここはどこだ?」
目がさめると、そこは何もない白い世界だった。
なんとか着陸に成功したかに思えたが、木に激突し、そのまま気を失ってしまった。
肩の傷を確認すると、何ともない。おかしい。あれだけの血が出て、傷を負ったのだ。治ったとしても縫い跡や傷が残ってるはずだ。
そして、最悪の考えが俺によぎる。
「まさか、死んだのか……俺……」
その確率はかなり高かった。木の衝突で死んだのかもしれない。たとえ、偶然生きていたとしても、出血多量で死んでしまうからだ。
頭をさわる。だが、頭に何もない。よく、死人の頭に出る輪。天使の輪がない。
三途の川もないし、天国への川もない。
俺以外に誰もいないのだ。
あたりを見回しても、やはり白い世界だ。
もしかして、とあるラノベのような状態なのか?と思っていると……
「私の世界へようこそ。ハヤテ。」
どこからか女のの声が聞こえたので、声の方向へ振り返る。
振り返るとそこには魔法少女の様な服を着ており、王座のような椅子に腰掛けている紅色の髪をした女が立っていた。
それは、まさに炎の様な髪色。。それは、力の根源とも入れる存在だった。ゆういつ気になったのは……
「ふふ、私に見とれた?」
頭に角があることだ。何だろう?よく、大魔王に生えてそうなツノだった。
魔王にしては、赤く輝いていて、とても美しい。それと胸が……
ボヨン!
とんでもなくでかいことだ。
「ふふ、私をそんな目で見るとはいい度胸ね。」
「あ、いや……」
やはり、ばれてしまった。そりゃー、あんな綺麗でしかも、爆乳な美少女がいたら誰でも見てしまう。見ないのが犯罪くらい。
怒られると覚悟をしたが、少女は、ニヤッと笑った。
「気に入ったわ。」
「はい?」
「やはり、貴方を呼んで間違いなかったわ。」
「は、はぁ?」
どうやら、向こうは気にいってくれた様だ。ただ、何というか……この流れだととんでもないことを言われそうだ。
「私のペットになりなさい。」流石にそれは……いや、それはそれでありかもしれない。
ま、とりあえず怒られないのなら何でもいい。俺には聞きたいことが山々だ。
「なぁ、聞いてもいいか?」
「ふふ、言わなくてもわかってるわよ。ここがどこで、あのドラゴンは何なのか……でしょ?」
勘が鋭い。そうだ、俺はゲームをしていたんだ。なのに突然、バグった様にドラゴンは出てくるは、大怪我をするわなどの悲劇のオンパレードだ。
「第一に、ここはゲームの世界じゃないわ。」
「え?」
なにを言ってるんだ? おれは、WFOをプレイしていたんだぞ?零戦に乗りながら敵戦闘機を打ち落としていた。
それが、ゲームじゃない?どういうことだ?
「貴方は、確かにゲームをしていたわ。あのドラゴンに会うまではね。」
あのドラゴンというと黒天龍王か。俺が適当につけた名前だが、もう、奴とは会いたくはない。
「貴方が倒したドラゴン……伝説竜の1つ、破壊の黒竜王ヴリトラ。」
あいつに名前があったのか。あれが、ヴリトラか……納得。地球でも有名なドラゴンだしな。
「私は、ドラゴンの神。神龍ガイア。すべてのドラゴンの産みの母。」
「え、ドラゴンなの?」
ドラゴンといえば、もっとごつい体をしてるはずだ。なのに目の前には、絶世の美少女だ。
「こう見えても、翼もあるしツノだってあるわ。」
そういうといきなり翼が出現した。それもえげつないぐらい大きい。黄金に輝いていて、とても綺麗だ。思わず見とれてしまう。
「私がドラゴンだと信じた?」
「あ、ああ。」
翼をしまい、再び、王座に座る。この際は神座というべきか。
「で、この世界については……」
ガイアは俺にこの世界について段々と話した。簡単にまとめるとこうだ。
ここ、グランブルセクターは竜と人が協力し、竜騎士と呼ばれるものが支配する世界。種族は人間と魔族が中心。人間と魔族との争いはないらしい。魔族と言っても、人間以外の種族全般を魔族と呼ぶらしい。
「て、貴方をここに呼んだのは……」
急にガイアが慎重になる。どうやらここが本題らしい。
「世界を救ってほしいからよ。」
よく、ゲームでありそうな展開だ。この答えにやっぱゲームじゃないかと思ってしまった。
「この世界はもう直ぐ、消滅するわ。」
「消滅? 何だかありそうな設定だな。」
「ちなみにいうけど、この世界が消滅したら貴方も消えるわよ?」
「え?」
「言ったでしょ? ここは現実。ゲームじゃない。貴方の肉体ごと、この世界に召喚したから。」
なるほど、痛いはずだ。生身の身体を傷つけられたのだからな。でも、消滅するとはまたリアルな話だ。
「理由は何だ?」
ノストラダムスの予言やマヤの予言でもでもあるのか?あれは、どう見ても嘘っぱちだった。マヤの予言に関しては、考古学者が「あと、7000年後でした。」とかわけわからんこと言ってたな。
だが、この世界はあり得るかもしれない。なんせ、ドラゴンがいるからだ。大地を破壊し尽くすドラゴンがいるかもしれない。ヴリトラだってそうだ。あんなのが地球にあわられたら核兵器に頼るしかないだろう。おそらく倒せたとしても、放射能で人類は全滅するだろう。
生き残ったとしても、北斗○拳やマッドマ○クスの様な世界が誕生するかもしれない。人の命よりガソリン。みたいな。
「最近、地震が頻繁に発生しているの。震源はいつも同じところ。そして、そこには……」
辺りが静寂になる。おれも、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「邪神竜レイブンが封印された場所なの。」
邪神竜については第3話 緑のドラゴン!?にて説明。
「最近、人間たちが邪神竜の神殿でなにやら行動をしてるらしいわ。」
どこの世界にも狂信者はいるもんだなと思った。身勝手な解釈だの、教団の都合など、本当に宗教には困らされる。
「理由は、邪神竜の復活。そして、それを使役することにあるわ。」
よく深い人間が力を求めて、神に手を出すのはいかがなものだろうか。人間は自然に生かせられてるのに過ぎないのに。
神を使役?バカじゃないのか。失敗するし、大地は破壊し尽くされるのがオチだ。
だが、俺にはある考えが浮かぶ。
「何なら、お前がそのバカな人間を殺せばいいじゃないか? もし、邪神が復活しても、お前なら倒せるんじゃないか? 最悪、封印もできるかもしれないし。」
ドラゴンは力の象徴。ましては、神龍となれば最強だろう。
「私は無理よ。」
俺の考えはひっくり返された。
「どうしてだ?」
「確かに、私は龍神。だけど、問題があるの。」
「問題?」
「ええ、それは私が神であることだわ。」
「神であることが問題?」
どこがどう問題なのだろうか?よく、俺らの世界では神が降臨し、世界を救うなどの伝説が残ってるが……
「私は神故に、肉体が存在しない。精神の様な存在だわ。」
「肉体が存在しない?」
「ええ、力はあってもそれに耐え切れる肉体が存在しない。どうしても無理だわ。」
「なら、天罰みたいなことはできないのか?」
嵐を起こすとか、クラーケンを放つとか映画でよくある話だ。
ガイアなら光の矢とか槍とかで邪神竜を倒せるんじゃないだろうか?
だが、神にもルールがあるというとこを改めて思い知らせれた。
「世界を作る上での条件があるの。」
「条件?」
「ええ、作り出した世界に、神は一切関与しないこと。」
ややこしい話しだ。でも、考えれば神から生命を守るためにあるのかもしれない。もし、邪な心を持った神が世界を作ったらどうなるのか?想像しただけでも怖い。
「自分たちで起こした問題は自分で解決させる。」
「つまり、人間の問題は人間で解決しろってことか。」
「ええ、私に許されるのはドラゴンを生み出すことだもの。」
「なるほど。」
邪神竜は人間達で何とかしろということか。
ところが、俺には疑問に思うことができた。
邪神竜は竜。竜を産めるのはただ1人……
「邪神竜はお前の息子の様なものじゃないか?」
俺の、疑問にガイアはやはり来たかと言わんばかりの表情だ。それは、とても暗く、悲しんでいる様にも見える。一体なにがあったのだろうか。
「レイブンは私が、初めて産んだ竜なの。」
「やはりそうか。」
「その時は力も弱くて、とても可愛かったわ。でも……」
ガイアはレイブンを溺愛していたらしい。そりゃー、初めて産んだ息子だからな。無理もないか。
「レイブンが成人……成竜になる時……」
「なる時?」
「突然、レイブンに何かが取り付いたの。」
「取り付いた?」
「ええ、突然暴れ出して、私は落ち着きなさいと言ったわ。でも、レイブンは苦しそうだったわ。」
その時の光景を思い出したのか突然泣き出した。その光景に俺は何とも言えない感じだった。
「しばらくすると、レイブンの体が突然真っ暗になり始めたわ。そして……」
「下界へ降りたと?」
「ええ、本当はあの時に殺しておけばよかったわ。でも、できなかった……」
最初に産んだ息子を殺さなければならない苦しみがガイアはには耐え切れなかったのだ。だから、下界に逃してしまい、多くの犠牲者を出してしまった。
「レイブンは今も、封印されながら死ぬことを許されずに苦しんでるわ。だから……」
「殺せと?」
「できれば取り付いてる何かを倒してほしいわ。でも、無理だわ……」
自分では殺せないから俺に殺してほいと。それが、ガイアにできる唯一の愛情なのだろう。
本来ならきつく叱らなければならない。 だが俺は女の涙には弱い。
「わかった。その依頼、引き受けよう。」
「……本当?」
「だが、その代わり……」
今の俺では、普通のドラゴンも相手にできない。なので……
「なにか、力をくれないか?」
「力? 」
「ああ、できれば強い奴を。」
「でも、貴方はこの世界の人間じゃない。だから、竜にはどうあがいても乗れないわ。」
む、それもそうか。お生憎、おれはドラゴンに乗るつもりなんてない。初めてドラゴンを見た時は乗りたいと思ったが、色々と躾とか餌代とか大変そうだ。
「召喚系の力をくれないか?」
「召喚? モンスターでもテイムするの?」
「いや、違う。」
「 ならどんなのがいいの?」
そうだな。おれはRPGは苦手だ。どちらかというと、FPSなど、オンライン系対戦系が得意だ。
「地球にある戦闘機や物質を召喚できる能力がほしい。」
操縦はWFOで習得済みだ。プロペラ機のみだが。
「わかったわ。すこし条件が付くけどいいかしら?」
「ああ、たのむ。」
「今、作るからすこし待ってて。」
すると、ガイアはパソコンの様なものを取り出し、なにやら打ち込んでいく。
五分後……
「できたわ。これでどう?」
自慢げに画面をみせる。どれどれ……
能力 異世界からの召喚。
1960年代前の戦闘機なら何でも召喚できる。しかし、1日10機限定。墜落したり、破損すると、一週間はその機体が使えない。
能力2 無限のエネルギー
乗っている機体の燃料は無限になり、ガス欠にならない。しかし、1日装備できるのは一機限定。
能力3 無限弾
戦闘機に積まれる機関銃の弾が無限になる。
ただし、弾づまりは無効にはならない。
連続50発までしか発射できない。次に発射するのに1分かかる。
弾の種類は戦闘機によってことなる。無論変更はできない。
能力4 薬品召喚
1960年までに発明された薬品なら何でも召喚できる。
液体は1日5リットル
固形物は2キロまで。
包帯などのその他の医療器具は召喚できない。
能力5 身体調査
相手の体を見ただけでどこが悪いのかすぐわかり、直し方を教える。
ただし、1日に20人限定。
能力5 爆弾装填
1日に一個だけ爆弾を召喚できる。
ただし、戦闘機に搭載できるものだけ。
重量は500キロまで。
ミサイルは不可。
どれも条件付きではあるが、チート並の力だ。これなら十分やっていけるだろう。
「これでいいかしら?すこし、おまけをつけておいたわ。」
「ああ、十分すぎる。」
「そう。なら、よかったわ。」
俺は、ガイアからチートを授かった。能力を六つも貰えるのはありがたい。
ただ、それだけレイブンは強いということか。
「さて、そろそろ時間だわ。」
すると、辺りが突然輝き出す。これは一体……
「本来、ここに来られるのは精神だけ。貴方はもうすぐ目覚めるわ。」
「そうか。」
「少しだけだけど、楽しかったわ。」
「もう、会えないのか?」
「ええ、恐らくね……」
ガイアの表情は寂しそうだった。ガイアいわく、もう2度と会えない。俺としても、こんな美少女と会えないのは残念だ。だからせめて……
「ガイア!」
「え、何?」
突然の俺の叫びにガイアは驚いた。俺は、腕時計を外し……
「これをやるよ。」
ガイアに渡した。決して高いわけではないが、せめてもの気持ちだ。ガイアは再び、この白い世界でひとりぼっちになるのだ。ある意味、封印されてると一緒だ。
「え、でも……」
「出会いの証だ。とっておきな。」
そう言っておれは、後ろを振り向く。男は黙って去るものだ。
「あ、ならこれを……」
そういうと、ガイアは右手のブレスレットをはずし……
「もう、会えないかもしれないけど……それは再会の約束として受け取って。」
受け止めたブレスレットには神秘的な光を放っていた。細工も細かい。
「わかった。」
俺の右手にはブレスレット。ガイアの右手には腕時計。もし、再会できるとしたら……
「「お互いに、楽しもうな!(みたいわ)」
光が一層強くなる。光がおれを優しく包み込む感じだ。
光が眩しい……