止まった時計8
動かない時間。
マンションの一室。
時を刻む音のない部屋。
部屋は朝日に染まり、月光に照らされ季節を見る。
ベランダのガラス戸が熱を帯び、冷気を吐く。
サッシを支える木材がじわりじわりと劣化する。
「どうして、動けないの」
女の声が気怠げに部屋に吸い込まれる。
キッチンに寝そべってはりつけられた壁時計を見上げる。
手元には積み上げられた本やゲーム。積み本を机にいらない紙を敷いて置かれたカフェオレ。転がる酒瓶。
シンっと動かない時間の部屋に女の鼓動がただただ吸い込まれてゆく。
時間は常に10時10分。
それがこの部屋の時間。