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創世の傍観者とマーリン  作者: 雪次さなえ
第四章 暗雲をもたらす王弟
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本日は二話投稿です。

       ***



「うーん、良い天気だなぁ…」


 佐和はアーサーのズボンを洗濯板に押し付けながら空を仰いだ。

 今が何月なのか正確にはわからないけれど、王都に来てからまだ肌寒かった朝の気温が少しずつ過ごしやすくなってきていることから、どうやらもうすぐ夏が来そうだとわかる。

 保護施設で学んだ感じだと、この世界にも四季はあるようだった。

 それにしてもまさか洗濯板を使って洗濯物をする日が来ようとは。

 本当にこちらの世界に来てからは予想外だらけの事ばかりだ。

 後輩達とかこれ、洗い方わかんないんじゃない?私はかろうじて小学生の時、昔の生活について調べようみたいな授業で体験したことあったから使えたけど。

 こうしていると文明の利器が恋しい。佐和の手はこっちに来てから確実に荒れた。

 ハンドクリームも無いしなー。あんまり気にするタイプじゃないけど、これはさすがに……。

 水の中から出した荒れた手を繁々と見つめて、太陽に手をかざすと腕につけていたブレスレットがきらりと反射して光った。

 マーリンがくれたブレスレット。

 佐和には似合わない可愛らしいデザイン。それでも、すごく嬉しかった。そうだ。

 マーリンに比べたらこんな苦労、どうってことない。


「…よし、もうちょい!頑張るぞー!」


 気合を入れ直し、佐和は洗濯を再開した。

 その時、周りのメイド達が突然忙しく動き始めた。誰か一人が真っ青な顔で何かを言うとそれを聞いたメイドも顔を青くし、次の人間に言う。伝言ゲームのように騒がしさが伝染していくのを見ていた佐和の元にも一人メイドがやってきた。


「巡回中のレオン卿が負傷されたらしいわ」

「え?敵襲ってことですか?」

「よくわからないんだけど、あなたも殿下の元に戻った方がいいかもね」


 レオン「卿」ということはウーサーの騎士だ。メイドの言葉にただならない事態だと佐和も納得し、急いで洗濯物を片付けてアーサーの元へ向かった。



       ***



「何があったの?」


 急いで駆け付けてみると、城の前の広場には人だかりができていた。城の入口にいたアーサーとマーリンに背後から声をかけるとマーリンが短く「わからない」と答えてくれる。


「通してくれ!!」


 人垣が割れるとその中心を馬が一頭こちらに向かってやってくる所だった。馬を引いているレオン卿と呼ばれた騎士はマントも鎧もぼろぼろで、馬の鞍にはうつぶせにされた別の騎士が四肢を投げ出して乗せられている。


「……殿下」

「何があった?」


 アーサーに跪いたレオン卿の肩をアーサーは労わるように掴んだ。


「隣町への視察の帰り道に傭兵に襲われました。」

「傭兵だと?何人だ?」

「少なくとも六人」

「わかった。二人を医者に!」


 アーサーの掛け声で兵士が駆け寄り、二人を医務室へ運んでいく。横を通った二人の怪我は生々しく、あちこち血だらけだ。


「物騒だね」


 佐和の世界とこちらの世界では社会情勢が全く異なる。盗難や殺人は日本の比ではないだろうが、それにしても騎士がやられるというのは少しまずい事態のように思えた。


「ああ、騎士が負けるとなると、一般市民には手も足も出ないだろうな」


 騎士というのは佐和の知識で言えば軍人だ。軍人が手の出ない相手となれば、一般市民に敵うはずもない。

 まあ、一般市民ならね。

 そう考えて佐和は苦笑した。

 そう言っているマーリンは一般市民とはとても呼べない。もし傭兵がマーリンを襲おう物なら、魔法で団子状態にまとめて、ぽいっだ。


「おい、マーリン。サワ。俺は陛下に報告をしに行く。お前らは俺の私室で待機だ」

「わかりました」


 こういう時のアーサーは頼もしい。しっかりとした足取りで王宮を練り歩いていく。佐和達は言われたまま、アーサーの私室に向かった。




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